7カオス 『サクリファイス』

 三十年も四十年も生きている間には、いろいろな体験をします。私はいま小説を書くのを趣味にしているとおり、ひとり本を読むのが好きです。


 ――なんのために本を読むのか。


 なかにそんなことをたずねる人がいますが、そんなのは決まっています。なぜテレビを見るのか、なぜ友達と遊びに行くのか、おしゃべりをするのか――もちろんそれは自身が楽しいからです。


 私たちは本を読むのが楽しいのです。


 さて、そうした本の中で、今回は「人生に影響を与えた本」について書いてみようと思います。でも、人生論のようなものを書くつもりはありません。「この本、おもしろいんですよ〜」ってなことを、その理由も合わせて書いてみようかなと思いついただけです。個人的には面白そうだと思うんですが、どうでしょう?


 最初に取り上げるのは、近藤史恵『サクリファイス』です。自転車ロードレースを舞台にしたミステリーです。めちゃくちゃおもしろい!


 ミもフタもない感想で恐縮です。

 実はミステリーとしてはざっくりと大味な作品で、むしろロードレースを描く場面と主人公レーサー、白石誓しらいしちかうの内心の描写がこの小説の読みどころであり、一番おもしろいところ。事件の真相にも心揺さぶられる思いがしましたし、読んだのは8年くらい前ですが、忘れられません。


 読者の思いはおおむね私と同じようで、その思いに応えるべく近藤史恵は、サクリファイスシリーズを書き継いでいますが、第1作『サクリファイス』が別格におもしろいです。


 私がこの本を一番に取り上げたのには理由があって、内容に感激した私は自転車(クロスバイク)まで買ってしまったんですよね(笑)


 読んだ本は数あれど、ケチの私に五万円以上する自転車を買わせるような小説は後にも先にもこの本だけです。これからもそんな本はないんじゃないかと思ってまず『サクリファイス』取り上げました。


 今朝もこの自転車で出勤しました。私の健康管理にもひと役買った『サクリファイス』をおいて、何が私の人生に影響を与えた本といえるでしょう(笑)

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