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あたしがいる。
フカミは目を瞬いた。美空は思わず目をこする。
少しつった大きな目、お母さんに似た丸い顔。おばあちゃんに似た細いくせっ毛がふわふわと肩の上で揺れている。
お父さんと同じ少し薄い瞳の色、男の子にからかわれた薄い耳たぶ。下がり気味の眉を精一杯きりりと上げている。
肌の色は少し違う。
ラン姉ちゃんみたいに白い。フカミは思う。
夏中サッカーをしていた男の子みたいに黒い。美空は思う。
それでも。
これは、あたしだ。
ちがう。あたしはこんな泣きそうな顔なんてしない。
あたしじゃ、ない。……でも。
「ミソラってんだぜ」
脳天気な声が響いた。
*
フカミは再び目を瞬いた。聞き覚えのある名は、それこそ信じられない話だ。
そっと少女の手を取った。ちょっと冷えてはいるけれど、ちゃんと温かい。柔らかい、子供の手。生きている人間の手だ。
「……ミソラ」
それは、死んだ子供の名だった。フカミと一緒に生まれ、ほんの一月ほどの間、一緒に暮らした。……生き続けることが出来なかった子供の名だ。
双子の妹の。
呼ばれた少女は、上目遣いのまま、頷いた。
名を呼ばれて頷いた。目の前の『自分』はまだ信じられないという顔をしている。
信じられないのはこちらの方だ。美空は思う。
似ているなんてもんじゃない。ショウゴが間違うのも無理はない。似ている、いや、違う。そっくりというのだと自分でも思う。
「フカミ、ちゃん?」
目を離さないまま、頷きかえされた。
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