第十一節 決着

 Asrionアズリオンが、大剣を振るう。

 ことごとくが必殺の威力を有した一撃の嵐は、しかしどれも絶妙にいなされており、それでもなお攻撃の手を緩めなかった。


 ゼクローザスが、盾を振るう。

 受ければ一撃で倒れる攻撃は、しかしララから供給される多量かつ強力な霊力により、全てを捌いていたが、決定的な隙を見いだせずにいた。


---


「何て技術だ……!」


 シュランメルトは思念をAsrionアズリオンへと送りながら、ララの技量に目を丸くしており。


「何て力だ……!」


 ララは有りっ丈の霊力をゼクローザスと武装に込め、Asrionアズリオンの攻撃を捌きながらも、確実にフレームへダメージを与えてくる膂力に驚愕していた。


「これだけの攻撃を加えても、一向に崩せる気配が見えない……!」

「すごい硬いね、あのギンギラギン」


 あとどれだけ攻撃すれば、崩せるのか。


「一向に、隙が見えんぞ……!」


 あとどれだけ捌けば、隙を突けるのか。


 シュランメルトは、そしてララは、じりじりと迫る限界を感じつつあった。


---


 さらにAsrionアズリオンの攻撃は続くが、実質膠着こうちゃく状態に近いものがあった。

 Asrionアズリオンの打ち込みは少しずつ鈍り、ゼクローザスはフレームの損傷で無茶な動きが出来ない。

 そんな時、変化の機会は訪れた。


「はぁあっ!」

「ぐっ……!」


 猛烈な打ち込みを食らい、ついにゼクローザスが態勢をわずかに崩す。

 その好機を、シュランメルトは見逃さなかった。


「もらったぞ、ララ!」


 大上段から、一気に大剣を振り下ろす。

 ゼクローザスはララの反応にどうにかついて行き、防御態勢を取った。


「ッ、やはり凄まじい重さだ……!

 しかし……ッ!」


 ララは渾身の霊力を込めた盾をかざし、大剣を防ぐ。

 それだけにとどまらず、霊力を込めた実体剣をも同時にかざし、二段構えで大剣を受け止めた。


「押し切れ、ない……!」

「くっ、左腕のフレームが限界か……!」


 ギリギリの状態で拮抗する2台。

 果たして――ゼクローザスは、Asrionアズリオンの大剣をかろうじて受け止めたのであった。


「今だ!」


 ララは胸部に内蔵した速射砲を、全弾叩き込む。

 耳をつんざく轟音が、立て続けに響く。


 ……しかし合計30発近い47mm徹甲弾APであっても、Asrionアズリオンの装甲はビクともしていなかった。


「これでも、ダメだったか……。

 だが、諦めはせん! はぁっ!」


 ゼクローザスが渾身の力を込め、Asrionアズリオンを剣ごと押し返す。

 受け止めた盾と剣には、深い切れ目が走っていた。


「これすらも、耐えるか……!

 ならば、次で決める……!」

Asrionアズリオン、気合い入れて!」


 Asrionアズリオンは大盾を構成する結晶を解除すると、基部となる小盾を右前腕に格納し、大剣を両手で保持する。


「良いだろう……次で決着としよう!」


 ゼクローザスもまた盾を投棄すると、剣を両手で構えた。


「「行くぞ、ララ(シュランメルト)ッ!!!」」


 シュランメルトが、そしてララが同時に叫ぶ。

 同時に、Asrionアズリオンとゼクローザスが全力で疾走していた。


「「うおおおおおおおおおおッ!」」

「はぁあああああああああああッ!」


 そして、2台は同時に剣を振るう――と、澄んだ音が響いた。






 しばしの沈黙が、空間を満たした。


 動きを止めたAsrionアズリオンが、ゼクローザスが、互いに剣を振り抜いていた。


 Asrionアズリオンには、異変は見られない。

 大剣を含め、どこも損傷はしていなかった。


 ゼクローザスにも、やはり異変は見られない。

 しかし。




 

 遅れて、




「見事だ、シュランメルト……。

 お前の、勝ちだ」


 ララが微笑みながら呟く。

 その直後、上半身が地面に叩きつけられ、残った下半身もくずおれたのであった。


「お前も見事だったぞ、ララ。

 全力、確かに受け止めた」

「うん、良い一撃だったよ」


 シュランメルトとパトリツィアもまた、微笑みながら呟いた。

 一拍遅れて、右の脇腹から胸部手前にかけ、Asrionアズリオンに裂傷が走った。




 ここに、戦いは決着した。

 Asrionアズリオンが、そしてシュランメルトとパトリツィアが勝利した、という結果を残して。

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