第七節 準備

「よし、後は呼ぶだけだ。

 パトリツィア、おれに触れていろ」

「やったー、合法的にシュランメルトに触れるー❤」


 先に荒野――リラ工房の敷地にある魔導騎士ベルムバンツェの演習場――に向かったのは、シュランメルトとパトリツィアであった。

 彼らは水分補給を終えるや否や、リラ工房にあるいかなる魔導騎士ベルムバンツェも持ち出さずに直接向かったのである。


 シュランメルトは最後の仕上げとばかりに、右手を天高く掲げ、力強く叫んだ。


「来いッ!

 アズリオンッ!」


 一瞬遅れ、突風が吹き荒れる。

 そして突風がだんだんと晴れると――




 そこには全高15mの巨大な魔導騎士ベルムバンツェAsrionアズリオンが立っていたのであった。




「よく来てくれた、Asrionアズリオン

 今日もよろしく頼むぞ」

「ボクもいるからー、全力を出せるよー?

 やったね、Asrionアズリオン


 シュランメルト、それにパトリツィアは、揃ってAsrionアズリオンに優しい声をかけていた。


     *


 一方。

 ララはコウのゼクローザスに搭乗すると、着々と機動手順を進めていた。


「霊力の貯蓄は十分にある。

 “一度限り”となるが……頼むぞ、ゼクローザスよ」


 ララの強力な霊力――アルマ帝国における“生命エネルギー”の呼称――が、ゼクローザスの神経系を満たす。

 準備体操をするかのように、拳を握らせ、また開かせる。

 思考による命令を、ゼクローザスはコンマ1秒の遅れも無く実行した。


「十分だ。

 お前の持つ力、全て使い尽くさせてもらうぞ」


 そして実体剣と盾だけを持ち、荒野へと向かう。

 と、そこに純銀の影が立ちふさがった。


「お待ちください、ララ様」

「ミハル中尉!?」


 ミハルは操縦席内部で笑みを浮かべながら、ララに何かを提案したのであった。

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