第八節 相対

「来たか」


 シュランメルトがモニター越しに見た視界では、純銀の人型ヒトガタ、ゼクローザスが向かってきていた。


「ん、あれー?

 戦うのはララちゃんだけじゃないのー?」


 パトリツィアの言う通り、向かってきたゼクローザスは“2台”だ。

 自立行動機能など搭載しておらず、また仮に搭載していたとしても使用する意味の無いこの状況で、どうして2台向かってきているのか。

 その事をシュランメルトが問う前に、ララが先手を打ってきた。


「申し訳ない、シュランメルト、パトリツィア!

 こいつが……ミハルが、『どうしても後方支援をしたい』というものでな!」

「ああ、そういう事か」


 合点のいったシュランメルト。

 次の瞬間には、ただちに返答を返していた。


おれは1対2でも構わないぞ。

 元々このAsrionアズリオンにも、2人で搭乗しているからな。

 ただし戦う以上は、撃破させてもらっても構わないか?」

「感謝する、シュランメルト。

 ミハル、良いな?」

「ええ。

 そう簡単にはとされません」

「承知した。

 では遠慮なく、2対1でやらせてもらおう」


 短く礼を伝えたララは、Asrionアズリオンの前に立つ。


「それにしても、お前の魔導騎士ベルムバンツェとやらは巨大だな。

 このゼクローザスの、1.5倍くらいはあるのではないか?」

Asrionアズリオンか? 15mはあるぞ」

「やはりな」

「ところでその、純銀の魔導騎士ベルムバンツェ……」

「“ゼクローザス”だ」

「ゼクローザスだが、どのような魔導騎士ベルムバンツェなのだ?」

「これか? これは指揮官用の機体だ。

 その中でもさらに、能力向上や特化改修を施したモデルだな」


 ララが自慢げに、ゼクローザスの基本スペックを語る。

 アルマ帝国の象徴とも言える鋼鉄人形に対し、彼女は誇りを抱いているのだ。


 それからしばしの間をおいて。

 ひととおり話を聞き終えたシュランメルトは「では」と促した。


「そろそろ始めるとしようか」

「同意見だな」


 そして、2台の巨大人型兵器はゆっくりと、相対したのである。


     *


 ここに至り、ようやく名乗りが行われた。

 2台は実体剣と盾を、そしてミハルのゼクローザスは120mm砲を構えると――


「参る!!」

「受けて立とう!!」


 重厚な金属の駆動音を響かせ、死闘を始めたのであった。

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