第二節 昨夜

 話は、2台の巨大人型兵器が激突する昨夜にまでさかのぼる。


 リラ工房改め、リラの巨大な邸宅では、集まった一同が夕食を取っていた。


「あの時は我ながら、無様ぶざまだったな。

 幸い酔いはすっかり抜けたのだが……しばらく酒類は、控えるとしよう」


 黒髪黒目の、長身の青年――シュランメルト・バッハシュタインは、以前に醜態を晒した事を、大いに悔いていた。


「今は夕食の時間ですよ、シュランメルト。

 落ち着いて、目の前の食事の味を確かめるのです」


 それをたしなめる、黒い長髪を携えた若き女性――リラ・ヴィスト・シュヴァルベ。

 彼女はこの屋敷の主であり、同時にシュランメルトや客人の“保護者”であった。


「安心してくださいませ。

 今日はバッチリと、酒類の見張りをしておりましたの。

 一口たりとも飲ませはしませんでしたのよ。ねぇ、グスタフ?」

「痛い痛い痛い!

 ひ、姫様、やめて……!」


 グスタフと呼ばれた幼い少年の耳を引っ張りながら話すのは、金髪碧眼の王女――フィーレ・ラント・ベルグリーズ。

 そして耳を引っ張られるのは、グスタフことグスタフ・ヴィッセ・アイゼンヘルツである。


「デレデレしてるからですわ」


 フィーレはぷんすかと怒りながら、食事に戻ったのであった。

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