第三節 客達

 一方、リラ工房の者ではない――つまり外から招かれ、あるいは乱入した――者達もまた、同じ食卓を囲んでいた。


「まったく、ここのご飯は今日も美味しいものだ。

 とはいえ、そんなに多くは食べられんな。ソフィア、後始末は頼む」

「かしこまりました」


 フィーレと同様に、金髪碧眼を携えた少女の名前はララ・アルマ・バーンスタイン。

 そしてその傍に控える、メイド服の従者は、ソフィアと呼ばれた。彼女は身辺警護や身の回りの世話を引き受けている。


 その隣には、半袖のブラウスにカラフルなベスト、そして際どく短いミニスカートという、お揃いの服を着る女子三人組がいた。


「うーん、眼福」

「ララちゃんにフィーレちゃん、可愛い~」

「ね~。

 おっぱいは無いけれど」


 お揃いの服ではあるのだが、それぞれ色が違う。

 手前から順に、ライムグリーン、ピンク、黄色というカラーの服を着ていた。

 怪しく輝いている目からは、企みを潜ませている事がうかがえる。


 彼女たちはそれぞれ――ライムグリーンが綾川あやかわ知子ともこ、ピンクが黒田くろだ星子せいこ――通称“黒子くろこ”――、黄色が有原ありはら羽里はりという。

 この場にいるのは3人だが、いずれも“美少女レスキュー・ビューティーファイブ”というレスキュー隊の隊員だ。


 それとはまた別種の存在感を放つ、男女がいた。


「このベルグリーズ王国とやらに来るのも、いつ以来か……ん、おいしい」

「コウ少尉、ものをほおばりながら喋るのは行儀が悪いですよ? ……おいしい♪」


 一人は黒猫風の顔をした男性、もう一人は赤毛の女性。


 外見通り黒猫くろねことあだ名される男性はコウ・エクリプス少尉。

 赤毛の美女はミハル・ジュドー中尉だ。

 どちらもララの部下であり、そして“アルマ帝国”の軍人である。


 紆余曲折あったものの、穏やかに同じ食卓を囲えるほどになった彼ら“客人達”は、リラの美味なる料理を存分に堪能していた。


     *


 その足元を、一匹の黒猫――コウではない――がグルグル歩き回っていた。


「ニャーオ!」


 一瞬のジャンプの後、黒猫はシュランメルトの太ももの上にどっかりと居座り、喉をゴロゴロと鳴らし始めたのであった。

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