荒野の決闘、果たし合う“最強”の二人

有原ハリアー

第一節 対峙

 2台の巨大人型兵器が、相対していた。


 1台は漆黒の、もう1台は純銀の、巨大な人型ヒトガタである。ただし純銀の人型ヒトガタは全高10.5m程度なのに対し、漆黒の人型ヒトガタは15mもの全高を有していた。

 それぞれが300m程度の距離を取り、両手に武器を構え、身じろぎもせずに相手を見据えている。


 しばし粘ついた空気が漂う中、それを切り裂くように、声が響いた。


「いつぞやはおれの不手際で、流れたものだが……今日は違う。

 覚悟しろ、ララ」


 漆黒の人型ヒトガタからは、よく通る低い、若い男の声が響き渡る。


「ララちゃんは可愛いけどー、シュランメルトやボクと喧嘩するとなるとー、ちょっと話は変わるかなー?」


 続けて、漆黒の人型ヒトガタからはソプラノの女声じょせいが響いた。

 軽い話し方ではあるが、言葉や声の調子には潜ませている闘志がにじみ出ている。


 その後、漆黒の人型ヒトガタは右手に持った剣を、切っ先を上に向け、捧げるように眼前に運んだ。


 それを受けたかのように、純銀の人型ヒトガタからも声が響く。


「『覚悟しろ』だと? 馬鹿者めらが。

 それは私のセリフだぞ。

 貴様の名誉のため、敢えて生身ではなく、この“ゼクローザス”に乗ったが……あまり私を、侮るなよ?」


 声の主は、幼い女性のものであった。

 続けて、ゼクローザスと呼称された純銀の人型ヒトガタが、手にした剣を真正面に構える。


「行くぞ。

 おれとパトリツィア、そしてこの“Asrionアズリオン”が相手だ」

「来い、シュランメルトにパトリツィア、そしてAsrionアズリオンとやら。

 この私、ララ・アルマ・バーンスタインが、そしてゼクローザスが、正々堂々と全力で叩き潰してやる」


 “漆黒の魔導騎士ベルムバンツェ”と呼称される人型ヒトガタAsrionアズリオン

 鋼鉄人形こうてつにんぎょうと呼称される人型ヒトガタ、ゼクローザス。


 2台は一瞬だけ、大きさが増したように見えると――




「参る!!」

「受けて立とう!!」




 重厚な金属の駆動音を響かせて、死闘のゴングを鳴らしたのであった。

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