4 不思議な出来事

 その日、家に帰ってからも私は上の空で、夜になっても眠れなかった。ベッドの中でゴロゴロしながら花音の呟きについて考える。

 「あ…には、これ…いから」ってどういうことだろう?最初は『あたし』でいいとして、「あたしには、これ…いから」かぁ…。何かがひらめきそうになったそのとき、


カタッ


 小さく音が聞こえて、ハッと周りを見渡した。でも、何もなってない。それなのに、謎の音はどんどん大きくなっていく。


カタカタ…カタン、カタン…


ガタン!!


 ひときわ大きな音がして、びくっと体が跳ねる。恐る恐る周りを見渡すと、風もないのに窓が揺れていた。まるで――誰かが揺らしているように――


ガタガタ、ガタガタ・・・ガタンッ!


 怖くなって、私は部屋から出た。でも、部屋の外はさっきまでの揺れが嘘だったかのようにシーンと静まり返っている。


「え…?」


 私は戸惑いつつも、とにかくお母さんに知らせなきゃ…と駆けだした。



―――――――――

――――――――――――――――――



「お母さん、早く!早く、私の部屋来て!!」

「ん…?リン、どーしたの…」

「いいから、急いで!」

「はいはい…」


 寝ぼけているお母さんを連れて、二階の端にある私の部屋に駆け戻る。全速力で走って、バタン!とドアを開けた。


ガタガタガタガタ…


 まだ、揺れてる…

 くる、とお母さんの方に向き直って、必死に訴える。


「ほら!私の部屋、揺れてるでしょ⁈」

「えぇ?全然揺れてないじゃない。リン、寝ぼけてる?大丈夫?」

「寝ぼけてるのはお母さんでしょ!…というか、見えてない――ううん、聞こえてないの…⁈」

「?…お母さん、眠いから戻るね…リンも、早く寝なさいよ――」


 そういうと、お母さんは寝室に戻ってしまった。私は、その場に呆然と立ち尽くす。

 確かに、揺れてるのに…。どんどん大きくなる音を聞きたくなくて、私は耳をふさいだ。そしたら、


ガタタッ!…カタ、カタ…ン


「⁈」


 少しの余韻を残して、揺れが、音が収まった。


「…なんだったの…?」


 まだ少し怖いけれど、明後日は入学式だし、明日はその準備をしなきゃいけない。寝不足は禁物なので、私はそおっと布団に潜り込んだ。脳はまだ思考を続けたがっていたけれど、体は疲れていたのかな。一瞬で眠りに落ちていた。



♦  ♦  ♦


「アハハッ!あー、あの怖がりよう。面白いねぇ。――そう思わないかい?リル」

「そう…かな。姉さ――ミルの、感覚と僕の感覚は…違う、から」

「――ボクにたてつくなんて、随分と偉くなったものだね、リル。キミはボクの弟なんだから、ボクのいうことだけ聞いていればいいものを」

「別に、たてついた、わけじゃ…ない…。世間論を、言っただけ…」

「ふぅん。まぁ、そういうことにしておいてあげようか。さ、いくよ」

「…」

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