行くぞ鳥人レース_2
洞窟の一部屋、薄暗い蝋燭の明かりが辺りを照らしている。
その部屋には三人の話し声が響いている。
一人はクラモトの側近の一人であるテルモトである。
「クラモトさん!あの小娘生意気にも鳥人レースに出るですよね…大丈夫ですか?」
答えるのはもう一人の側近であるフクヤマだ。
「大丈夫だよ…クラモトさんは去年優勝してんだ!いくら狩りがうまいからって今年初出場の小娘なんかに負けるはずない!!」
そしてもう一人…その二人の言い合いをニヤリとしながら見ているのはクラモトである。
「てめえら、私の体を見てもまだおんなじ事を言えるのかよ」
クラモトがその翼を開いて自身を誇示する。
ひときわ大きい翼、絞りに絞り切った引き締まった体、翼を動かすために膨らんだ肩の筋肉、飛ぶために形作られたような姿だ。
「す…すみません…でも、私心配で…」
「まあ、確かに…クラモトさん、あの小娘は族長の推薦で出るんですよ…何も策が無いって考えるのも危ないですよ…こっちも何か手を打たないと!」
部下二人はクラモトの優勝を万が一にも逃さない様に心配をクラモトにぶつける。
しかし、クラモトは不敵な笑みを浮かべる。
「馬鹿がよぉ!何も手ぇ打ってないわけねぇだろ、しゃーねぇな!出てきなクロスメアルカ!」
クラモトが何かを呼ぶように声を上げる。
クラモトに呼応するように部屋の隅の影が歪に動く。そして、その影は少しずつ大きくなり人の形を取り始める。
その様子を部下の二人は目を擦りながらじっと見続ける。
影から形作られたのは真っ黒な長髪に赤と黒のマントを付けたモンスター娘。
その姿を見たテルモトとフクヤマの二人は驚愕する。
僅かに見える吸血牙、首元に入った呪い除けの魔術痕、そしてその何よりも深い。
「く…クラモトさんこ…こいつは」
「
その言葉を発した二人の事をじろりと睨んだ吸血鬼は美しい黒髪をひらめかせながら歩き出す。
「ご名答…我はブラッドルグラスの五代目、クロスアルメカ・ブラッドルグラスである」
「「…ごくり」」
ブラッドルグラス家といえば、モンスター娘の中で名家中の名家である。想像よりもはるかに大きい名前が出て部下の二人は息を飲むことしかできない。
そんな中、クラモトが笑い声をあげる。
「ギャハハ!!そんなビビんなくてもいいだろう!!こいつは味方だぜ!お前らにはこいつと一緒に仕事してもらうんだからよ!」
「え!?クラモトさん!?どういうことですか!?」
「そのまんまの意味さ…お前らには鳥人レースの当日にあの小娘についている男をさらえ!」
部下の二人は驚愕の表情を見せる。それもそのはず、そんな作戦のためにわざわざ吸血鬼の化け物が足を運んだというのか。にわかには信じられない。
「ま…このクロスアルメカは保険だ。あの族長が出張ってきた時のな、だから、基本的にはてめえらが頑張るんだぞ」
「ちょ、ちょっとクラモトさん!?」
自分たちを通さず話が進んでいることに不満を上げるフクヤマ。
しかし、この数秒後クラモトの言葉によってその不満は消え去ることになる。
「てめえらは、さらったその男を好きにしてもいいぞ、、ばれた時のことなんかの保険は全部私がやっといてやる、だから、てめえら三人で好きにしろ。ギャハハ」
その笑い声にこだまするように他の者も笑い声が挙げる。
小さな部屋には四つの笑い声が響く。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます