いざ!ハーピィの里へ!

 

 ワシワシさんとタカタカさん――<<鳥さんシスターズ>>とでも呼ぼうか――の二人は僕に背を向けてこそこそと話している。

 僕がお嬢様の治療を引き受けてからしばらくこの調子だ。あれ?これもしかして「裸の少年ってこいつのことかも?」とかなってるのか?

 その場合はやばい、万が一にも僕のことがばれた瞬間に<<貞操緩そうな男>><<お嬢様を傷ものにした不届きもの>>のダブルパンチで強制種付け生活(僕が)の始まりだ。とりあえず様子を伺わなければ。

 

「あの~お姉様方?なんのお話をしてらっしゃるのでしょうか?」

「うぉ!?アルノー君か…これはこちらの話だから君は気にしなくてもいい」


 これはどういうことなんだ?僕の中に浮かんできた考えは一つ。性奴隷にする相手だから何も語る必要はないと…。あれ?これ詰んでない?

 うわああああ!!もうこうなったら全力で媚びてうやむやにするしかない!!!

 でも媚びるってこういうお姉さん相手にどうやったらいいの!!?

 そうだ、『女を篭絡する10の方法(女の願望10選)』で読んだあの伝説の『ボディータッチ』とか言うやつだ!!

 

「僕にも教えてくださいよ~さわさわ」

「ふぅおぉ!!?なななっななんだ!?」

「何話してるのか僕も気になります、こちょりこちょり…」

「くふん…わ…脇腹はやめてくれぇえ…」


 後ろではファウランが「おおー少年!!大胆ネ!!」とか言ってるが、僕に気にしている余裕はない。今後の僕の人生が決まる重要な場面なのだ!!

 

「本当に…あふん…君に話す…あひん…ほどのことではないのだ!!」

「いや~そんなこと言ってもね、さわさわ」

「あっあ姉者!!ずるいぞ!!それは!!変われ!その場所変わってくれ!!」

「ええ!?ワシワシさんが教えてくれんですか?さわりさわり」

「くふぉ!?ふふっそうだ、もっと触るんだ、そうだしっかりと腹筋をなぞれよ」

「おい!!なんでそっちに行くんだ!!私はまだ満足してないぞ!!」


 もうてんやわんやだ。もう鳥さんシスターズの目にはハートが浮かびかけている。

 それでも、僕にも退けないわけがあるのだ。そのためにワシワシさんのくびれを鼠径部にかかる線にかけてジィイイックリとなぞる。

 

「早く言ってくださいよ…ツツーー」

「あふぅ!もう…イク!!もうイ…クから!!」

「ふぇ!?いやいや行くって何が?そうじゃなくて言ってください!!」

「だから…イクって!!んなああああぁぁふぅうう!!!!」


 グラマラスなボディを惜しげもなくビクンビクンと揺らす。揺らしている間もなぞるのをやめることはない。

 一しきりビクッビク!とした後、ワシワシさんは僕の腕をつかんではぁはぁ言っていた。


「はぁ…はぁ…ふぅ…少し落ち着いたぞ」

「話す気になりましたか?」 

「分かった…ハァ…分かったから、この後は二人っきりの時に頼む…」

「なに!?姉者!!ずるいぞ!!しっかりしてもらっておいて!!」

「うるさい!!これはアルノー君が私を選んだという証拠でもあるんだ!!」

「なにぃ!?まだ聞くまで分からないだろう!!!」


 僕をほっぽり出して喧嘩しだす鳥さんシスターズ。本当に何なんだ?僕はここに来てから生きた心地がしていないんだ。もう性奴隷決定なら、一思いにやってくれ。


「もう、どっちでもいいんで早く教えてください…」

「そうだな…普通に考えれば確かにアルノー君に聞くのが一番早い話ではあるな…うん、そうだ単刀直入に聞くぞ!!」


「ごくり…」

「ハーピィの里まで私たちで連れて行くんだが君はどっちの背中に乗りたい?」


 え?どっちの背中に乗りたいとかその程度のことだったの?はあぁあああ…。

 一気に肩の力が抜ける。確かに普通に考えれば、僕のことがばれる要素は現状ハーピィ達は持ってないことが予想される。

 僕の性奴隷への道は閉ざされたわけだ。めでたしめでたし。

 

「なんだそんなことですか…安心しました…」

「なんだそんなこと…って私たちにとっては数少ない男性経験になる重要事項だ!」

「そうだぞ!男性を背中に乗せたことがあるなどというリア充アピールを人生で一度はしてみたいんだ!!それで私か?姉者?どっちにする?」


「いや…どっちでもいいですよ…」


 二人は美人さんで双子なのだ。失礼だがな考えだが会ったばかりで違いもそんなに判らないのだ。本当にどっちでもいい。

 だが二人にとってはこの言葉は願ってもない言葉だったらしい。目を輝かせて、手を握ってきた。

 

「何?どっちでもいいとは本当か!?君は多くの女性と触れ合うことに忌避感を覚えないのか!?」

「まあ、そうですね…」

「聞いたか!?妹!!!」

「聞いたぞ!!姉者!!!なら答えは簡単だ!!」

「「二人で交代でアルノー君の運ぶぞ!!」」


 嬉しそうに顔を見合わせて言葉を重ねていた。

 

 しかし、それを見て口を開くのは今までおもしろがって静観を決め込んでいたファウランである。

 

「あの~それで、私のことはどっちが運ぶカ?」


「ん?私たちはアルノー君を運ぶという大仕事があるんだから」

「だからファウランは勝手に登ってきてくれ!前連れてったから道は分かるだろう?」


「んのおおおおおお!!無理ヨ!!普通に無理ネ!!」


 この二人もなんだかんだファウランをめんどくさく思っているようだった。



 …………

 

 ………

 

 ……

 

 …

 

「空を飛ぶのってこんなに気持ちいいんですね!!」

 

 始めに僕を乗せてくれてたのはワシワシさんだ。

 そしてなんだかんだ、タカタカさんはファウランを乗せている。

 だから、今ワシワシさんはご満悦の表情を浮かべている。

 

「そうだな、ハーピィはいつもこんな感じで飛んでいる。それで、腰をつかんでいる君の手をもっと上の方にしてくれないか」

「上ってこうですか?」

「そうだ、もう少し上にして…それで胸のところが膨らんでいて掴みやすい形状になっているから鷲掴みにしてくれ…」


「えっと、もう少し上にって…その手には乗りませんよ!!!」

「くそ…!!いや違う!!今のは鷲掴みとワシワシを掛けただけだ!冗談だよ冗談!!」

「そんな冗談通用しませんよ…」


「まあどっちにしろ腰も気持ちいいからもう少し上にしてくれ…落ちそうだ」


 そう言って、ふらふらと高度を下げていくワシワシさん。

 

「ちょっと!!ちょ!!落ち着いて!!僕ごと死んじゃうから!!!」


 こんなやり取りをしながらハーピィの里に向かうのであった。


 

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