この子の一面
「おおー!こんなところにいたカ!!探したヨ!!」
元気いっぱいに金髪をなびかせてやってきたのは、あの自称研究者ファウランだ。
やって来たファウランは僕とツバルクさんの間にドカッ!と座った。
「待たせたカ?少年?」
小さな首をかしげて顔を覗き込んでくるファウラン。体の大きさは僕より少し小さいくらいだ。そんなファウランを見てツバルクさんは訝しげな顔をしている。
「君は一体なんなんだ?アルノー君!この少女は君の知り合いなのか?」
「おおーそうヨ!私たち仲良しネー」
そういって、腕を絡ませて胸をこすり付けてくる。確かに、一般的な女性とよりもはるかに可愛らしいと言える外見だが、不審者にこういう事されると少し怖いな。
というか、この様子を見て警戒をさらに強めているのは僕よりもツバルクさんだ。
「…君には聞いていない。私はアルノー君に聞いているんだ」
「怖いネー!私たち仲良しって言ってるのニ」
肉食獣が取った獲物を守るような目でツバルクさんはファウランをにらむ。
なんで、そういう表情してるの?しかし、それに対してもファウランはひょうひょうとした態度でかわしている。
「お前はいいって言ってるだろ」
「心外ネー、結婚の約束もしてるヨ!」
「けっけけっ結婚!?おい本当なのか!?」
「嘘ヨーアッハハァ!」
おちょくるような態度を見せるファウランに対して、剛直なツバルクさんはどうやら分が悪いようだった。そして、その後も続く「仲がいいのか?」「大丈夫ヨ」の繰り返しが何度も続く。
すぐに引くと思ってツバルクさんに対応を任せていたが、どうやらこのままでは済まないようだ。僕から何かを言わないと終わらないな。ごめんなさいツバルクさん。
「いえ、僕はこんな人知りま…ムグゥッ!!?」
いきなり口に手を当てられて脳が混乱を起こす。
何?これなに?なんで?
僕の口に思いっきり手を当てて、ニッコリ笑い耳元に口を寄せてくるファウラン。
「少年言葉に気を付けるネ」
顔を真顔に戻して、強気な言葉告げて手を放す。
「え…どういうこと?」
「そのままの意味ネ、私は少年が超高位魔法を使えることを知ってるネ」
僕が超高位魔法を使えるということ…なんでこの少女は知っているのか。このことは周りではレイさんしか知らない。しかし、レイさんには口止めしたしばれるはずがない。僕自身にもばれてはいけない理由があるため口を滑らせたなどという理由も考えられない。
自分の中で疑問と不安が渦巻く。
「え?いや、その…なんのことだよ…」
「流石にそれは通じないヨ、いいからばらされたくなかったら話を合わせロ」
一気に脅しをかけてくるファウラン。たしかに、ここでばらされるのは僕の中でリスクが高い。…仕方がないか。
「すみません…ツバルクさん…待ち合わせしてたんです…」
「これでいいカー?」
「え…?アルノー君?本当か?」
裏切られたような顔をするツバルクさん。
しかし、ここでばれては僕の夢が潰える可能性もある。ごめんなさいツバルクさん…。
「そうです…ごめんなさいツバルクさん今まで黙ってて」
「…本当なんだな?」
「ええ…」
僕とツバルクさんの間で数言かわされる。
心配そうなツバルクさんの顔。勝ち誇ったファウランの顔。
「これで決まったネ~向こうに準備があるから一緒に行くネ」
強く手を引っ張られていくが、ついていく他あるまい。このファウランという少女本当に何者なんだ…?
………
……
…
「さ、この馬車に乗るネ。大丈夫ヨ、取って食おうっていうわけじゃないカラ」
連れられた先には大きめの馬車が用意されていた。8人は乗れるだろうか?先には2頭の馬がいて、後ろには御者がついていた。
まあ、僕の横にはファウランがぴったりくっついているため、逃げるわけことはできない。
「はいはい…乗ればいいんでしょ!」
いきなり、秘密を握られ腕を引っ張られ連れてこられたことにより少しイライラしていた。そんな怒りに対してもファウランは無頓着。
「そうね、乗ったらすぐ馬車出すから中で座っておくネ」
二人を乗せた馬車がガタンゴトンと動き出す。
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あの異国人少女とアルノー君の二人を見送ったあと、一人でソフトクリームを眺めていた。
「間接キスか…」
私には婚約者がいるのだ。間接キスなどでもその人のために取っておきたい。
「アーノルド・レシス君…」
婚約者の名前を反芻するように口の中で繰り返す。
そして、このソフトクリームをもう一度視界に捉える。そして口に近づける。
「は!?私は何をしているんだ…」
婚約者に逃げられて弱気になっているのか。
それとも、あの少年がアーノルドに似ているから私の心を動かすのかは分からない。
「いやいや!何を考えてるんだ!私は!」
自分の中のもやを切り取るように思考を切り替える。
「いや…それよりも…あの異国の少女…明らかに様子がおかしかったよな…すこし尾行してみるか」
自分がなぜこんなにもアルノー君を気にしてるのかは分からない。「いや!そうだ!アルノー君は冒険者組合にとって大事な男なんだ」と自分に言い聞かせる。
「それならば追うしかあるまい…」
手に持っていたソフトクリームをペロっと平らげ、二人が消えていった方へと向かう。
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