一緒にお風呂!!
ビイプは興奮した。必ず、かのド変態めちゃシコボディを打倒しなければならぬと決意した。ビイプには性技がわからぬ。ビイプは、冒険者組合の組員である。書類を書き、男日照りに愚痴を言って暮らして来た。けれども男性の肌に対しては、人一番敏感であった。
――いや、この絶景を前にしてどこかの走り屋のように物思いにふけるのは失礼であろう。しかし、哲学せざるを得ない。眼前に広がるのはアルノーの小さくしかし程よく筋肉がついた背中だ――この美しき肌色を前にしてはいろいろ考えるのも仕方がないのだ。それこそビイプは三十路に近いこじらせてる処女なのだ、耐えられる道理は存在しない。
「ふ、ふおおぉぉムグゥッ!!」
しかし、ビイプは小さい両手を自分の口に押し当て失言を防ぎ性欲を抑え込む。この場面で女の性臭を出した瞬間にこの夢のような一時が終わりかねないからだ。
「ビイプまだなの?そんなに背中流したくないなら別にやらなくてもいいんだよ?」
アルノーからこちらを気遣った発言が飛んでくる。しかし、私の心に浮かぶ言葉は一つ――『それをすてるなんてとんでもない』
「いえ!これは私がしなきゃならないことなんです!それに、アルノー様の役に立てるのが私は嬉しいので大丈夫です!」
精一杯、健気な少女のような声を出す。
ビイプは神に感謝した。ドワーフとして生まれてはや三十年。このドワーフらしい小さな体を憎んだこともあった。
しかし!!!
初めて会った時に冗談で言ったあの「わたし十三歳で組員になったばかりで…お互い新人として頑張りましょうね!」という言葉がまさか信じられるとは思わなかった。
「それじゃあ、背中洗わせてもらいますね」
自分の手に石鹸を付けて、精一杯泡立てる。うまく泡だたないこの時間がもどかしいが愛おしい。本当に私が発情せずにこの大仕事をやりおおせるのか心配になる。
いや!でも!泡立った両手を見て精神を引き締める。そんな、心配をしてる暇はないやるしかないのだ。
「それじゃあ行きますね」
「んっ…ふ……んあ」
むきゃあああああ!!なんで、少し石鹸付けただけでそんなに悩まし気な声出せるの!!
「ゴシ…ゴシ…っと」
「ふぅ…あふ…」
「お…おきゃげ…お加減は如何ですか?」
「ん…気持ちいいよ」
なんだよ!?この天性の処女殺しは!?この抑えるような喘ぎ声が私の心臓をつかんで無理やりに鼓動を早くさせてるような気さえする。ドクドク、ドクドクと鼓動が早鐘をうつ。
「ビイプの手って柔らかいね、それに温かい…」
「ふぇ!?あ…ありがとうございます」
なんでそんなこと言うの!?自分の中のいたずら心が鎌首を持ち上げてくる。
「ん…ふんっ…あ、もっと…強くしてもいいよ、くすぐったいから」
あははと乾いた笑い声に紅潮した頬をみて、私の心が焼ける。
駄目だ!もうこいつが悪い。私は何も悪くない。
このド淫乱少年めえ!!
「少し下の方も洗いますからね~」
さも、当然のように背中から少し下の方に手を持っていく。
しかし、これで明らかにお尻を触ると性臭を感じ取られてしまう。
「…あくまで境目…あくまで境目…」
自分に言い聞かせるように、アルノーには聞こえないくらいの声で決まり事を発する。背中とお尻の境目。そしてたまにお尻!!
もう自分の中の興奮はMAXである。本来ならここを出てすぐさまトイレに駆け込みたい。しかし、一時の感情に流されてはダメだ。ここはお宝の山なのだ。ここにはオカズという名のお宝が数多く眠っている。逃げれば戦士の名折れだ。
「あのさ…ビイプ…」
やっちゃったか!?今のは確かに割れ目に指がかかってたかもしれない。
いや、とぼけろ!ここが戦士の腕の見せ所であろう。
しかし、自分の喉から出た声は思ったよりもメスの声だった。
「ど…ハァ、どうしました?痛かった…ですか?…ウクッ」
もう、喋るのもつらい。自然と喘ぎが出てしまう。やってしまったか?アルノーからの審判を待つ。
ここで、焦って多弁になればボロが出て絶対に審判により『強制別居』という判決を受けてしまうだろう。
しかし、アルノーから出た言葉は自分の予想とは違ったものだった。
「あのさ…洗ってもらうばかりだと悪いから、僕も背中洗ってあげようか?」
……………は?聞き間違いかな?
「今なんて言いました?」
「いや、僕もお返しに背中流そうかって?」
「ぜひお願いします!!」
興奮が最高潮になった私は即答でYESを答えてしまった。
この選択が間違いだったことに気づくのはすぐ後であった。
…………
………
……
…
私はお風呂椅子に座って、アルノーの手を待っている。
興奮が抑えきれず自然と体が揺れてしまう。背中を流したことは一度あるが(もちろんその一回目もアルノーだ)、背中を流されるなど初めてだ。こんなこと、既婚女性が夫に頼み込んでやっとしてもらえるかどうかくらいのことだ。精一杯楽しもう。
「それじゃ、いくよ…」
「はい、来てください」
これって情事の時の言葉みたいだなと変な想像をしてクスリとしてしまう。
アルノーの手が近づく。ざわめく心を押さえつけてその準備を終える。
アルノーの手が背中に触れる
「む…くぉ…」
にゅおおおお!!なんだこの多幸感!初めて尽くされる悦びを知ってしまった。
ビイプにとってはこれで十分。もう満足しきっていたが、アルノーの手が止まることはない。それもそのはず、この行動の本質は背中を洗うことにあるのだから。
「むきょっ!おきょっ!」
「あはは、ビイプってば背中敏感なんだね!」
アルノーの手が一回上下するたびに、変な声が出てしまう。
駄目だばれてはいけないと胸元から巻いているタオル口で噛むことにする。
「ん……くん……」
どうにか少し声が納まったが、興奮がとどまることを知らない。タオルの噛む強さが自然と大きくなってくる。
そんな、努力もつゆ知らず、アルノーは鬼の提案をする。
「背中がかなり敏感なんだね。もしかしたら、強く擦ってみたら荒療治みたいになって治るかもしれないね」
「はっ?」
「むきゃあっ!!あきゃあっ!!」
もう、タオルを強く噛むことなど考えられない。目がチカチカとする。さらに声の大きさも上がってしまう。アルノーの手が上から下へ縦横無尽に背中を駆け回る。
「いぎぃい!みきいいぃ!」
「あはは!ビイプおもしろいね!」
どれだけ声を出してもアルノーの手が止まることはない。
アルノーの悪い癖だ。たまに出てしまうイタズラっ子の心。普段出る分にはとっても可愛らしいで済むのだが、この場面で出てしまったか…
「あひぃ!もう無理!いぎぃ!もう無理だって!」
気持ちよさと切なさで、目から口からと体中の至る所から水があふれてくる。
それでも、アルノーの手が止まることはない。
「あへぇ!もう…無理ですぅ!」
ドシーーーン!!
そのまま浴室に大の字にぶっ倒れてしまった。
――記録2分、この大記録を打ち立てたビイプは幸せそうな顔をしていたという
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます