はじめてのバディ
朝の街の雑貨屋は静かでいい。だからこうやって外套のフードをとっても、最悪な状況にならないのだ。
これが、昼過ぎや夕方のにぎわった時なら……あれはなかなかヤバかったな思い出さないでおこう…。
そんな考えをしていると気の良さそうな店員さんに声をかけられる。
「兄ちゃん!何を探してるんだい!」
「いやぁ、申し訳ないんですけど適当に見てるだけです」
「いいんだよ、こんなきれいな兄ちゃんに見てもらえてるんだ、商品も喜んでるよ。」
そんな冗談を飛ばしながらカラカラと笑う。
「あ!そういえばこの前革袋が破れちゃって、これなんですけど」
「ちょっと、見せてもらうよ…これだったらまだしばらくは使えると思うけど。
心配だったら、うちで新しいの見ていくか?それかあたしの妹の店で修繕やってるけど」
「そうですか?それなら修繕してもらおうかな?」
「分かった!その店までの道おしえるよ!」
そう言って、さささっと土の地面に簡単な地図を描きだした。
「ここをこっちに行って、まっすぐ行って…右に曲がって突き当たったところだよ」
「ありがとうございます!行ってみます!」
あの店員さんの妹さんの店を目指して歩く。
ええと…ここを右に…ん?
酒場の前に明らかに場違いの女性がいる。
蒼髪に灰色のカチューシャまではごく普通なのだが、首から下が真っ黒な鎧に包まれていた。
女性はきょろきょろ見回して、あっちに行って路地をのぞき、そっちに行っては上を見上げたりしていた。それを見かねて声をかける。
「あの…もしかして、道に迷ってますか?」
「ええ、お恥ずかしながらその通りです…冒険者組合に行きたいのですが…」
「あ!じゃあ、僕もこの後組合で用事があるので一緒に行きましょうか!」
「それは、ご丁寧にありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきましょうか」
僕もこの町に来た時にはよく迷ったものだ。革袋はまた今度でもいいや。
困ったときには助け合いだ!
「そういえば、まだ名前を名乗ってはいませんでしたね。ツバルク・ロスベリーといいます。どうぞお見知りおきを」
胸に手をあて丁寧にお辞儀される。っていうか、苗字持ちってかなり名家だな。
「これは、これは、ご丁寧に。僕はアルノーです。」
「あら、あなたがあの男冒険者のアルノーさんでしたか。」
「え?ご存じなんですか?な、なんで?」
「知ってますよ。だって私があなたの組合での用事なんですから」
「ってことはあなたが本部から派遣された人ですか?」
「ええそうです。不思議なご縁もあるものですね。」
そう言ってにこっと笑いかけてくれる。その様子には他の女性とは違って、落ち着きが見える。
そうか、最初から微妙に感じてた違和感はあれだ。この人からは性欲というものを全く感じないからだ。
「失礼で申し訳ないんですけど、男性と話し慣れてますね。」
「いえ、慣れてるというか騎士の家の出身なので、ちょっとお勉強しただけです」
「騎士爵位の方でしたか、どうりで」
「それに、私には目標がありまして、性欲やそれに類するものが沸いたことがないのです。
あら、もうこんな時間そろそろ向かいましょうか」
そうなんだ…騎士って大変だな。。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲
「「お待ちしておりましたツバルク様」」
冒険者組合ではビイプとレイさんの二人が礼をして待っていた。
なんか珍しい組み合わせだな。
顔を上げたレイさんは僕を見てギョッとした表情をした。
「あ、アルノー君!?ツバルク様と一緒に来たってことは貴族のくらいを利用してアルノー君をあの手この手で……来る途中の路地裏で羽交い絞めにして言うんだ…お前は犬だ良い声で鳴いてくれよって…それを聞いたアルノー君がくうんくうんって言うんだ」
レイさんのトリップ癖はいつもどおりだった。ツバルクさんのフォローしないと。
「あ、これは平常運転なので気にしないで上げてください。」
「ですです。無視して会議に参りましょう。」
「よろしいのですか、それなら参りましょうか。」
「そうして言ったんだ。私の足をなめなさいって…そうしたらアルノー君もなんだかんだ乗り気になってきて……ブツブツ」
木の椅子が2つずつ向かい合って並んでいて、僕とツバルクさん、ビイプとレイさんに分かれて座った。
「まあー焦らすのもよくないですから、単刀直入に言いましょう。」
一呼吸置いてツバルクさんが口を開く
「アルノー君、レイシャルさんあなたたちペアを「わーー!わーーー!ところでアルノー様!?今日の夜ご飯どうしますか?」
言葉をビイプが遮る。
「すみません聞こえませんでしたか、お二人でペアを「わあああああい」
「お二人で「ちゃああああい!!!」
「くんで「とおおおおい!!」
ビイプの鉄壁のディーフェンス!ディーフェンス!
「もうっ!!!お二人でペアを組んでしてほしい仕事があるんですが!いいですか!?」
賽は投げられた。
「目的は二つ、一つはアルノーさんがレイシャルさんの冒険者技術を学ぶこと。もう一つは森の調査をしてほしいってことです。おそらく、それにはアルノーさんの力が必要であると私は踏んでいます。どうですか?やっていただきますか?」
僕は別に大丈夫だが、レイさんはどう思っているのだろう?
そう思ってレイさんを見ると……
「これあれだ……もうゴールインのやつだうぇへ…うぇへへ…」
トリップしていた…。
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