△閑話 おっぱい何キロ持てる?
リュッグがシャルーアに課したトレーニングメニューは本当に単純なものだった。
―――――― その1:ランニング200m、計5周。
「はっ、はっ、はっ、はっ……」
トレーニングメニューは、いつやるかの時間は設定されていない。シャルーアの都合や空いている可能な時間にすること、と言われている。
しかしながらランニングとなると、それなりに広い場所が必要で時間もかかるので、シャルーアは朝早くに起き、エル・ゲジャレーヴァの宮殿敷地内にある兵士調練用のグラウンド場を走ることにした。
「ふへっ、うへっ、ふへっ、ふひひっ」
「えっほ、えっほ、えっほ……ぅっ、鼻血でそー……」
「ほい、ほい、ほいっ、ほいっ……ゴクッ」
「頑張れ頑張れ、もっと両手大きく振ってー、えへ、えへへっ」
トレーニングを始めた初日。この場で出会った不良兵士達が付き合ってくれ、周囲で一緒に走ってくれている。
シャルーアの目標とするランニング距離は、普段の訓練にも不真面目な彼らでも付き合うには楽勝。
何よりいやらしいスケベ心が疲れなど感じさせず、全員が持久走にしてはやや無理ある態勢で、揺れるシャルーアの胸を凝視しながら走り続けた。
―――――― その2:筋トレ、腕立て伏せ20回。
「い……ち、……に、ぃ……、さ……ん……っ」
筋力なんて言葉とは無縁なシャルーアにとって、ランニングよりもたった20回の筋トレは遥かに苦しい。なので余計に周囲の男達の存在が意識外になる。
「その調子その調子ー。……やっべぇな、コレ」
「ゴクンッ―――(―――ひぇぇ、おっぱい地面でひしゃげる感じがっ)」
上下する身体に合わせて、彼女の豊かな胸も石畳の上に落ちたり持ち上げられたりと、目まぐるしくその形を変える。
シャルーアは、いつもの服のままで下着もなしにトレーニングしているので、その変形度合いたるやかなりのものだった。
「……こっちも、ヤバイかもしれん……」
「いい乳してんなーとは思ってたが、腰細くてケツもいい……」
しゃがんでシャルーアの左右からそのバストを覗き見てる2人とは違い、もう2人は立ったまま彼女の下半身を上から見ていた。薄布腰に分かるヒップラインから目が離せない。
―――――― その3:筋トレ腹筋、20回。
「ふっ……ん、……んっ、っしょ……ぅう、んんっ!」
腕立て以上に苦しそうに声をあげるシャルーア。
踊りは出来てもこういう動きはあまりしないせいか、あまり使わないお腹の筋肉がわずか1、2回で悲鳴をあげるのだ。しかも――
「はい、がんばれー。上半身あげる瞬間だけお腹に力いれてー、そうそういいよー」
壮絶なるじゃんけんを勝ち抜いた不良兵士の1人が、彼女の脚を固定するように座りながら、その両腕を引っ張ってサポートしなければ、自力で上体を持ち上げられないほど非力だった。
「ちくしょー、いいなぁ……」
「しかしこれはこれで…うひひ」
「あの服、よく胸元のとこズレないよな、2cmも横にズレたら見えるんじゃね?」
―――――― その4:筋トレ背筋、20回。
「よいっしょ、よいっしょ……んしょ、んっしょ」
腕立てや腹筋とは違い、これは逆に得意らしく、スムーズに上体を反らすシャルーア。
しかもなかなかの柔軟性で、前から見るとおへそが完璧に見えるほど、その上半身は反り上がっていた。
「くっ……これは貧乏くじか……しまった……」
今回、じゃんけんで勝った兵士は悔し気に歯噛みしながら、彼女の両脚を押さえている。
何せ背筋トレーニングの場合、サポートすると見えるのは少女の後ろだけで、反るたびに地面との間から弾けるように飛び出してくるバストを拝めない。
「へへへ、考えが足りなかったな、お前……うっほー、眼福眼福♪」
「ま、彼女の脚に触れてラッキーって思っとけよ。ひゅー、たまんねー揺れだぜ」
しかし10回を数える頃にサポートの兵士は気付く。柔軟で大きく反るがゆえに、そのお尻と太ももの間にスカート越しにも浮き上がる魅惑の境界線の存在に。
結局は彼も20回を終えるまで鼻の下を伸ばした。
―――――― その5:
「はぁ、はぁ……んんんぅっ!」
筋力の弱いシャルーアは、ここまでのトレーニングでもう脚にきていた。あのでこの屈伸は1回1回に時間がかかり、一度お尻を落としたところでプルプルと振るえ、再び身体を持ち上げるのに数秒をかけた。
「頑張れ、もうちょいだっ」
「揺れは少ないがこれはこれで……いいねぇ」
「むしろ時間かけた方が効果ありそうだな」
「あと3回、しゃがむ前に一呼吸入れてから……そうそうっ」
これらの筋トレはどこでも出来るが、兵士達にサポートしてもらえたことで上手くやりきれた事もあり、ランニングから続けてこの調練場でこなした。
気づけば彼女のトレーニングに付き合うことで、不良兵士達も何だかんだでいつもよりも運動量が増えていた。
・
・
・
早朝のトレーニング後
「ええと、私が使っても良いのでしょうか? 兵士の皆さんが汗を流すところ……なのですよね??」
汗だくになったシャルーアを見かね、不良兵士達が連れて来たのは調練場の脇にあるシャワー施設だった。
シャワーといっても、高低差を利用して常時垂れ流してる湧き水の滝があるだけ。キッチリと床も壁も石畳で覆われてはいるが、武骨で雑な造りだ。兵士用だけあって横幅広く、同時に20人は汗を流せるだろうが、姿を隠すしきり板なんかはない。
「大丈夫大丈夫。まだ朝早いし俺ら以外、だーれもいないからね」
「ここの湧き水は豊富だし、24時間ずっと垂れ流しだ。むしろ浴びなきゃ勿体ないさ」
「そーそー、遠慮は無用だよ」
「んじゃ、俺らは外に出てるから。ごゆっくりなー」
面倒見のいい人を装いつつシャワー施設から出ようとする彼らだが、当然ながら覗く気満々だった。
ところが、そんな彼らに想定外かつ衝撃的な提案をシャルーアがする。
「? これだけ広いのですから、皆さんもご一緒に浴びればよろしいのでは? お待たせするのもなんですし、私一人で利用させていただくのは忍びないです」
「?!」「なっ!?」「ッ?!?」「な、なんですとぅっ!??」
すると有無を言わさないとばかりにシャルーアがさっそく服を脱ぎ出す。
下着をつけてないので当然すぐに全裸―――不良兵士の一人があまりの事に動転し、彼女に手を伸ばした。
ムッニュウウウ~~!!
「ふぉおあ!!?」
彼は別に、そうするつもりではなかった。服をぬいであられもない姿になるのを止めようと、脱がされた服の上から押さえ留めさせようとするつもりだった。
しかし一瞬遅く、その両手は彼女の豊かに放り出された乳房を下から支えるように、ちょうど手でブラの代わりをするような形で掴む事となってしまった。
「おまっ!!?」「てめぇ、何やってんだ!!?」「そいつはダメだろっ」
「ち、違うんです! これはその、ええと……そうっ、立派なものをお持ちなので抑えるものが無くなると重くて肩が大変かなぁと思ったまででっ!!」
言い訳が、自分でも何言ってるのか分からない。
―― ヤバイ、でも手が極楽。
―― マズイ、さすがに悲鳴を出されるかも。俺終わるっ!
―― この人差し指と中指の間に少し挟まって来てるの突起は何かな~?
グルグル回る兵士の頭の中。
だがその大半を占めるのは胸の弾力ある柔らかな感触への感動ではなく、俺の人生終了のお知らせ。
しかしこの世に女神はいた―――1秒後、彼はそう思わされることになる。
「まぁ、ありがとうございます……そんなに気をつかっていただけて。それではお言葉に甘えまして、このまま浴びさせていただいても良いでしょうか?? そうしましたら、皆さんもご一緒に汗を流せますよね?」
「なんっ!?」「??!」「な、ナニィ!?」
滝に汗を流す間、全裸少女の豊かな胸を全裸男達が交代で持ちあげ支えるという、奇妙で謎なシャワータイム制度ができた瞬間であった。
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