『稚児考』 *『弘児聖教秘伝私』などからのあらゆる可能性から稚児の実態を推測する

泊瀬光延(はつせ こうえん)

はじめに

『稚児考』 *『弘児聖教秘伝私』などからのあらゆる可能性から稚児の実態を推測する


 弘法大師はあはれなり。こうちごせいぎょうひでんしの男色はじめの始祖となり

   梁塵秘抄私より



 井原西鶴「男色大鑑」のコミカライズ、現代語訳と江戸の「なんしょく」文化の見直しと解釋が進んで来ている。時代によってその傾向は異なると思えるが、日本には古来から男色の文化があったとされる。その揺籃が「稚児」と呼ばれた中世の少年達である。この男色文化の発祥について考える場合、数多いとは言えないが重要な文献とその考証が存在する。この論考はそれらの資料をもとにして私なりの稚児という生き物の実情を推測するものである。

 稚児という少年を愛の対象にする物語の論考に入る前に、男と男という性の組み合わせの大きな概念である「男色(だんしょく)」のおさらいをしようと思う。

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