第三十八話 十階層 1
アキさん、メリッシュさんと別れた私達は六階層、七階層と進んでいた。その間にゴブリンとの戦闘も何回もあり全て二体か三体の複数で行動している者ばかりでどの戦闘もギリギリで切り抜けた来た。
――あれを使うしかないかな?
「それはなりません!」
私が思ったことに対してフレイからの突っ込みが入る。
――なんであれを使えばグレイさん達も守れるし、私だって全力を出せるんだよ。
「それでもです!」
――はい。
とりあえずフレイの言葉に従っておくことにした。
でも、もしもの時はフレイの指示は無視して使えばいいよね。
そんな事を考えていた。
そんな私達が今居るのは九階層の階段がある安全地帯にいる。
「はぁ、はぁ」
皆ここに到着するまででかなり体力を消耗している。
私もかなり大量を失っていた。
「もうすぐ十階層か」
とても低い声で言葉を発したのはグレイさんだった。
だが疲れすぎてか誰も言葉を発しようとしないこと。
「グレイさん何か戦略はありますか?」
「すまんが今まで通りいくしかないと思う。何の情報もないわけだしな」
確かにその通り。
なのですが、今のままだと五階層の時の二の舞になる。
どうしたら……?
「グレイ、それだと五階層と同じ事になるぞ」
「だがそれ以外に何かあるのか?」
私も何も浮かばない。
それからしばらく皆で考えたが何も案が出ないままだった。
「とりあえずは今のままで行きましょう」
私が一人で戦うなんて言えない。私はまだ新米冒険者。先輩方にもプライドがある。
それでも、もしもの時はあれを使うしかないよね。
「それしかないな」
皆渋々納得する。何か言いたそうな顔をしているがないかが邪魔をして言えないのかも知れない。
それからしばらく安全地帯で休息を取った私達は十階層に向けて階段を上っていく。
しばらく登っていると五階層と同じ扉が見えてくる。
グレイさんによって扉が開けられた。
――フレイ、ボスモンスター二体いない?
私の見間違いかも知れないと思い聞いて見る。
「ミレイ様、確かに二体確認出来ます」
ウソでしょ!
今までのボスはモンスター一体だけだった。
「何だよこれ、ボスが二体居るなって」
皆さんの顔が青くなる。
とても信じられないという顔をしている。
だがすでに入り口の扉は閉ざされていて、部屋から出るにはボスを倒すしかない。
「ボスが二体も出るなんて聞いたことねーぞ!」
「こんなの勝てるわけがね」
「皆さんぼーっとしないで下さい。来ますよ!」
私は皆さんの声を聞きながらもボスから視線を外してはいなかった。
ボスが二体。ここまでのギリギリの戦闘。
少しの希望が絶望へと変わっていく。
「検索」
私はボスの情報を見るための魔法を使う。
ゴブリンマスター
耐性:火 風 水 雷 自然 土
二体とも同じ情報が見える。
周りを見てみると誰も武器を構えていない。
「皆さん、早く戦闘体勢に入って下さい! 早く!」
声が聞こえていないのか誰も動かない。
だがボスからしたらそんな事関係ない。
二体のゴブリンマスターは腰の斧を構えてこちらに向かってくる。
大きさは五階層にいたゴブリンキングほどではないが移動速度が無茶苦茶速い。まるでゴブリンキングの動きが亀のような遅さに感じる位に。
「皆さん、早くしないと」
最後にもう一度声を掛けるがやはり反応がない。
私がそんな事をしている間にゴブリンマスターがすぐそこまで迫っていた。
狙いはグレイさん達。
私は、二本の刀を構えてグレイさん達の前にかばうように出る。
皆さんを守らないと。
その気持ちからの動きだった。
全速力で向かってきながら斧を振り折りしてくる。私は、それ刀で受け止める。
もう一体のゴブリンマスターが別方向から向かってきている。
「グラビティーバインド」
もう一体はバインドを掛けて動きを何とか止める。
このままでは私はともかくグレイさん達は確実やられてしまう。
――フレイあれ使うけどいいよね!」
私は、もうこれしかないと思いダメ元でフレイに聞く。
「ダメです! こればかりが絶対にです」
予測通りの反応が返ってくる。
――ごめんね。でも私は皆のこと守りたいから。
私はゴブリンマスターをはじき返してから、
「マイルーム」
この魔法は空間制御魔法の一つで自分の思い描いた世界を別の空間に作り出すことが出来る。最大で三つまで保存しておくことが可能。
そして何故フレイがこの魔法の事を秘密にしておきたいのかと言うと、空間制御の魔法自体を使える者自体が殆どあらず、その上で高ランクの空間制御魔法を使える者はほぼ居ない。そしてこの魔法は空間制御魔法の中でも最高ランクの者にしか使えない物だからである。
私はいつも特訓で使っている空間を開く。
その中にグレイさん達三人を放り込み空間を閉じる。
「これで本気が出せる」
私は肩を回しながらゆっくりとゴブリンマスター達に向かって歩いて行く。
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