第三十七話 話し合い

 ひとまず私達は先へ進まずここ五階層で休息を取っていた。


 グレイさん達の傷は癒えたとは癒えまだ体力は回復しきっていない。


 そのための休息となっている。


 私はその間先程拾ったドロップ品の確認を行っていた。


 ダイヤモンドが十個。ゴブリンの腕。アイテムポーチ。そして帰還玉もあった。


 私はそれを皆さんに伝えると、


「一つだけではな」


 ここに居るのは六人。それに対して帰還玉は一つ。


「グレイさんもう一つあります」


 私は昇格試験の時に宝箱から出てきた帰還玉を取り出す。


「だがそれはお前のだろう」


「いいんです。それよりもこれで二つです」


 一つ増えたところで脱出出来るのが一人から二人に増えていただけ。結局四人はここに残らないといけない。


 皆考え込んでいる。


「俺はアキとメリッシュがこれを使うべきだと思う」


 グレイさんが最初に提案を出した。


「お前達二人は魔道士だ。今後二階層のときと同じようなトラップがあるかわからね。そのときに俺達前衛メンバーはなんとかなる。だがお前達は前衛メンバーが居ないとかなり危険だろう」


 私もその意見に賛成であった。


 もしもあの時の同じ状況になったときに今度も助けにいけるとは限らない。


「確かにそうだぜ」


「俺もそれでいいと思う」


 他の皆さんもグレイさんに意見に賛成のようであった。


 だが二人は、


「皆を置いて私達だけ先に脱出なんて出来ないよ」


 アキさんは自分たちだけ先に脱出してあんぜんな場所に戻るなって嫌だと言う。


「私もよ。それにミレイだって残るんなら私達先輩が先に脱出なんて出来ないわ」


 二人とも脱出するのは嫌だと言う。


「バカを言うな! 今の状況を考えればお前達二人が脱出するのベストな選択なんだ。これから先に事を考えるとミレイの力必要だ。それにここからの上のモンスターは全て耐性を持っているだろう。そんな中で魔道士の力何処まで通用するか分からない」


 一階層のモンスターですら全ての耐性を持っていた。これから六階層、七階層以降に出てくるゴブリン達は確実に耐性を持っているだろう。それに対して魔道士が出来ることは支援と言えばバインドか回復くらいになる。


 それなら先に戻ってもらった方がいい。


「それでも私達にだって出来ることはあるよ」


「そうかもしれんな、だがなこれから先の戦いでお前達二人を守ってやることは出来ないかもしれん。守れたとしてもその代わりに誰かが犠牲になるかも知れん」


 強い口調で言うグレイさん。


「……」


 それに対して二人は何も言えなくなってしまった。


「お二人が先に脱出していただければこのダンジョンも情報をいち早くギルドへ報告することが出来ます。そうすればすぐに街全体にこの事が知らせることが出来ます」


「それもそうね」


 メリッシュさんは納得してくれたがまだアキさんが納得いかないという顔をしている。


「アキ、皆の気持ちに甘えとこ。このまま私達がいても足手まといだよ」


「うん」


 小さく頷くアキさん。


「ではこれを」


 二人に帰還玉を渡す。


 それを受け取るときに、


「すみませんが、ここで見た私の能力の事はまだ秘密にしてもらえると助かります」


 さすがにここで見たことをそのまま伝えられるとまずいと思いお願いする。


「分かってるわ」


「言わないわよ」


 これで一安心。


 それから二人は帰還玉を足下へと落とす。


 玉から白い煙が出てきて二人を包み込む。


「皆無事に帰ってきなさいよね。外で待ってるんだから」


「ご無事を祈っております」


 その言葉とともに二人の姿は消えてしまった。


「脱出出来たのでしょうか?」


「ああ。今はもうダンジョンの外に居るだろうな」


 二人が脱出してからしばらくして私達は六階層に向けて出発した。


 まだ完全に体力が回復したわけでないが少しでも早くここを脱出する為に私達は、動き出したのである。

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