第三十六話 五階層 3

 ――それでフレイ弱点って何処なの?


「ゴブリンキングの首筋です。あそこだけ硬貨の魔法がかかっていません」


 ――分かった。


 私はフレイからの報告を受けてすぐに行動を開始した。


「ウォータークリエイト」


 この魔法は水で自分の想像する物を作り出す魔法。私はこれを使い自分の分身を複数体作り出して向かって行く。


 ここまでの戦闘でゴブリンキングの背後を一度もとれていない。そのため分身を囮にして私は背後へと向かって行く。


 凄いスピードで分身消されていく。私が背後に回り込めるか分身が全滅するか時間との勝負。


 分身立ちは縦横無尽に動き回り的を絞らせないようにしているがそれ以上のスピードで振り下ろされる棍棒で消えていく。


「皆ごめんね!」


 思わずそんな事を呟いてしまった。やられているのは水で作られた分身。


 私は雷速を重ね掛けして速度を上げて後ろに回り込む。まだ分身も数体残っている。


「もう少しだけ頑張って」


 私は地面を思いっ切り蹴り飛び上がる。


 まだこちらに気づいていないゴブリンキング。


「これで終わりだよ」


 二本の刀で首筋を切り裂く。


 先程腕を切ったときと違いあっさりと刀が通る。


 私が一撃を与えて地面に降りると、


「ぐぁ~!」


 ゴブリンキングがうなり声を上げる。


 確実にダメージは通っている。


 だがゴブリンキングがこちらに視線を移動させる。周りを見てみると分身達はすでに皆やられていた。


 ――フレイ少し無茶するよ。


「分かりました」


 ここまで毎日してトレーニングの成果を見せるとき、


「フレイ憑依」


 五体目の精霊との融合。


「制限時間は三十分です」


 まだ成長途中の私の体では最大で四体までの精霊との憑依が限界。そのため毎晩五体の精霊との憑依を体にならすトレーニング行ってきた。フレイの話しによると成人する十五歳になる頃には七体の精霊との憑依が可能になるらしい。


 私の前に数字が浮かび上がる。


 この数字がゼロになれば自動的に精霊達との融合が解除される。


「ファイアークリエイト、ウォータークリエイト、サンダークリエイト、グラビティーバインド」


 火と水、雷の分身を作り出す。それに合わせてゴブリンキングにバインドを掛けて動きを止める。


 分身達は、いろいろな方向からゴブリンキングに向かって行く。


 何とか応戦しようと体を動かそうとするゴブリンキングだが、自由に動く事が出来ない。


 私はグラビティーバインドに合わせてアイスフィールドの効果で周りの氷を操り手足を凍り漬けにして動きを完全に止める。


 それに合わせて分身達を一斉にゴブリンキングの首筋に向かわせる。


 私も首筋に向かって行く。


 何とかバインドを解こうとするが解けない。


 首筋に到着した分身達はそれぞれの属性の弾丸となり攻撃を与えていく。


 攻撃を与える度に声を上げるゴブリンキング。


 分身達が全て消えた、後最後は私の攻撃でとどめを刺した。


「お……終ったよ」


 ゴブリンキングが消えてアイテムがドロップした後私は安心したのか尻餅をついてこけてしまった。


「ミレイ、大丈夫? 何処もケガはない?」


「心配させないでよ」


 アキさんとメリッシュさんが私の元までやってきた。


「はい大丈夫です。それよりもグレイさん達に目を覚しましたか?」


「ええ、今はまだ動けないけどしっかりとミレイの戦闘見てたわよ」


 ――マジですか!


 心の中で驚いてしまった。


「ミレイの事凄いって褒めてたよ。それにありがとうって言ってたわよ」


 涙を流しながら話しているアキさん。


「それに他の皆さんもミレイにありがとうって」


「ミレイがいなかったら私達とっくに全滅してたんだから! 本当にありがとう」


 メリッシュさんに抱きしめられた。


 でもまだ五階層なんですがとは言えない。


 それから暫くの間メリッシュさんに抱きしめられていた。


「すみませんメリッシュさんそろそろ離してもらってもいいですか?」


「どうして?」


 そこ聞き返されても困るよ!


「だって後ろで皆さんが見ていますので」


 私は顔を赤くしながら答えた。

 

 すぐに私を離して後ろを見る。


 そして顔が真っ赤になってしまった。


「お前達いつの間にそんなに仲良くなったんだ!」


 元気を取り戻したグレイさんがそんな事を言ってきた。


「べつに仲良くなんてないわよ」


 ぷいっとそっぽえを向きなが答えるメリッシュさんは少し可愛く見えた。


 それから私はドロップアイテムも拾いアイテムポーチへとしまう。


 それからキリさん、アルさんも目を覚した。

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