第三十四話 五階層 1
二階層以降も問題なく進んできた。戦闘はゴブリン達との一対一六での戦闘で連携をしっかり取っていれば後れを取ることなく対処出来た。
四階層に上がってからは二対六や三対六と厳しい戦闘が数回あり皆ダメージを受けながらもなんと突破することが出来た。受けたダメージは回復魔法を使える私とアキさんで皆さんを癒やしながら先へと進む。
そして五階層ボス部屋の扉の前にやって来た。
「ボス部屋だな」
グレイさんが扉を前にそのような事を呟いた。
Sランクダンジョンのボス。ここまでのゴブリン達の強さから想像するとかなりやばい相手だと思う。
「皆開けるが心の準備はいいな!」
こくりと頷く。
そしてグレイさんの手によって扉が開けられた。
中は他のダンジョンのボス部屋と何も変わらない。
六人全員が中に入ると同時に入り口が閉ざされる。
全員表情は変わる。
目の前に現れたのはゴブリンキング初級のボスモンスターと同じであった。
手に持っているのは棍棒。
検索で見てみると、
ゴブリンキング
耐性:火 風 水 雷 自然 土
やはり全ての耐性持ちのようであった。
「フィールド展開」
今更隠すこともないので結界魔法を使う。
「これは一体?」
急に足下光始めたことに驚いたグレイさんが聞いてくる。
「ゴブリンの耐性を消すフィールドを張りました。これでアキさん達の魔法も聞くはずです」
私が答えた後、それ以上聞いてくることはなかった。
鼻息荒くこちらを見ているゴブリンキング。
少し笑っているようにも見える。
「戦闘体勢に入れ! 攻撃を仕掛ける」
その言葉と同時に武器を構える。
最初に攻撃を放ったのはアキさんとメリッシュさん、魔道士二人である。
「アースランス」
「ウォーターランス」
先端が鋭い、土の槍と氷の槍がゴブリンキングに放たれた。
二種類の槍はゴブリンキングに当たると同時に消えるが一階層の時のゴブリンと違い痛みを感じている。ダメージは確実に受けている。
それを見て前衛四人が飛び出して近づいていく。
先手必須。
実力は相手の方が確実に上。それなら少しの隙を突き倒しきる。グレイさんが五階層への階段を上がる前に言っていたことであった。
そして、四人全員がこれで勝ったそう思った矢先、
「皆さんよけてください」
異変に気づき叫んだがそれは少し遅かった。
アキさん達の魔法を受けて意識がこちらから外れたと思って居たがそうではなかった。
ゴブリンキングの持っていた棍棒が私達に向かってきている。
私の声でそれに気づいたグレイさん達。
「防御に専念しろ!」
その言葉が発せられてすぐ棍棒が私達に直撃した。
壁まで吹飛ばされる。
「グレイー!」
メリッシュさんが叫んだ。絶望に染まった声で。
私達は壁に激突した。
何とかグレイさんが叫ぶ寸前全員の服に防御力アップを付与していたおかげ傷は負ってはいるがまだ生きている。
「フルヒール」
グレイさん達に回復魔法を掛ける。
傷は癒えても意識を失っているためグレイさん達立ち上がっては来ない。
それでも先程受けたダメージで皆さんが死ぬことはない。
「皆さんゆっくりと休んでいてください」
寝ているグレイさん達にそれだけ言って私は立ち上がった。
こちらに向かってきているアキさん達。
「ミレイは大丈夫なの?」
一人だけ立ち上がっている私を見て聞いてくる。
「私は大丈夫です。それよりもグレイさん達を守って上げてください」
「守ってあげてくださいって、ミレイ、あなたはどうするの?」
すっごく不安そうな声で聞いてくる。多分私が何をしようとしているのか分かっているんだと思う。
「少しあそこの大きなモンスターと戦ってきます」
それだけ言って、私はゴブリンキングに向かって行こうとするが、
「一人でなんて行かせないわ」
メリッシュさん。が私の腕をつかんで引き留める。
「メリッシュさん離してもらえませんか?」
「ダメよ!」
必死で止めてくる。
ごめんなさい。
思いっきり捕まれている腕を引きはがす。
それからも私を止めるために必死で叫んでいるメリッシュさん。
私は振り返ることなくゴブリンキングに向かって行くのだった。
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