第三十二話 合流

 私達がグレイさんの元に到着する少し前。


「アル無事だったか!」


「ああ、リーダーも大丈夫そうでよかったよ」


「キリもな」


「まあ、モンスターと遭遇せずに合流できたの運がよかったな」


 転移後あまり距離が離れていなかった三人はすぐに合流することが出来ていた。


 ダンジョンの階層がまだ低いこともありモンスターの数は少なく遭遇することはなかった。


「だが、メリッシュ達三人の方が心配だぜ。アキとメリッシュは後衛魔道士だし、ミレイに関してはまだCランクだ。もしもが無いとは限らね~ぞ」


 女性メンバーの心配をしているキリ。


 確かにこの場合一番の危険なのはメリッシュ達三人になる。


「早めに合流しないといけないが……」


 正直な話しキリ達と合流できたのはかなり運がよかった。


 ダンジョンの各階層広さは全てバラバラで探すだけでも一苦労。その上でモンスターとの遭遇を回避しつつ無事に合流出来る可能性はゼロに等ししも同然。


「まさか、ダンジョン内にトラップがあるとは」


 皆油断していたわけではない。それにあのトラップは誰であろうと見つけることが出来なかったと思う。


 だが、それでも俺はこのパーティーのリーダー。最悪の事態を想定しておかないといけなかった。


 自分を責めてもしょうが無い。


「探しに行くぞ!」


 アル達に声を掛けるが反応が返ってこない。


 どうしたのかと思い、


「二人とどうした……」


 目の前にゴブリンが一体いた。


 手には棍棒を持っている一階層と同じゴブリンだろう。


「二人とも戦闘準備だ!」


 俺は剣を抜き構える。


 遅れて二人も戦闘の準備をする。


 三人で倒せればいいのだが。


 そんな事を考えている間にこちらに気づいたゴブリンが攻撃を仕掛けてくる。


「アル! ガードを頼む」


「了解!」


 右手に持つ大きな盾で棍棒を防ぐ。


「ウソだろう」


 攻撃を仕掛けてきたゴブリンの後ろにもう一体。


 こちらに気づいている様子。


「終わった」


 そう思ったそのとき、


「アースバインド」


 聞き慣れた声が聞こえる。


 声の方を見てみると、メリッシュ達がそこに居た。









 グレイさん達の戦闘の声を聞き駆け足でその場所に向かった。


 探知の魔法に三つのゴブリンの反応がある。


 急がないとまず。それはメリッシュ達も理解していた。


「まだ無事だよね?」


 弱々しい声で聞いてくるメリッシュさん。


「信じましょう」


 私はそれしか言えない。まだ三人の反応は強い。


 それでも何が起こるは分からないのである。

 

 そして私達がグレイさん達の姿を見つけたとき、アルさんがゴブリンの攻撃を盾で防いでいたときだった。


 無事でよかったと心の中で安心した瞬間、グレイさんの顔が絶望にそまり何かを呟いていた。


 私はその視線の先を見てみると、先程攻撃をしたゴブリンの後ろにもう一体こちらに気づいているゴブリンが居る。


「アキさん、私の合図でアースバインドをお願い出来ますか?」


「それはいいけど、どうするの?」


「私に任せてください」


 それだけ言って私は、


「お願いします。二体とも狙ってください!」


「まかせて! アースバインド」


 前にいるゴブリンと後ろにいるゴブリン両方の動きをバインドで封じる。


 でも動きを止められるのは多分一瞬でも、


「ありがとうございます!」


 その言葉と同時に思いっきり地面けってゴブリンに接近して倒す。


「まずは一体」


 私はグレイさんの方をみること無くもう一体のゴブリンに視線を移す。


 すでにバインドは自力で解かれており剣を構えてこちらの動きを伺っているようだ。


「フィールド展開」


 私は空間魔法を使う。この魔法は私の半径百メートルにフィールド展開する。フィールドの効果は二つ。一つは相手の耐性を無効化すること。もう一つは相手の能力値をワンランクダウンさせることである。


 後の事を考えると少し憂鬱になる。それでも目の前で仲間が死ぬのは見たくない。


 その思いからこの魔法を使おうと決めた。


「ミレイ様来ます!」


 ――ありがとう。


 ゴブリンから意識が離れていた私にフレイが教えてくれる。


 でも耐性を失って居るゴブリン。


「ファイアーショット」


 小さな火の弾を数発高速で打ち出す魔法。


 火の弾は簡単にゴブリンの体を貫き倒す。


 探知魔法でもう一体いたゴブリンの動きを見てみるがこちらには気づいていない様子。


「一安心かな?」


 一息つこうとしたそのとき、


「ミレイ、今のはいったい何なんだ?」


 今度は皆から質問攻めに合う番のようだ。

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