第三十一話 単独戦
「はぁ~」
ため息が出る。
もっと普通の冒険者ライフが送れると思っていたのにどうしてこうなってしまったのかな?
Cランクまでは一気に上がってからのんびりと冒険者としての仕事をこなして行きながら時々休みをとってスイーツ巡りをする。それが私の思い描いていた冒険者ライフだったはず。
でも今では私の秘密がばれる寸前の所。今後はもっと大変なことになるかも知れない。もしかしたらこの街にいられなくなるかも知れない。
それでもあの二人を救いたい。
「しょうがないよね」
ため息交じりに呟きながらゴブリンの姿を確認する。一体は一階層と同じ棍棒を持っている。もう一体は少し離れ場所に剣を腰に下げて辺りを見渡している。
二体の戦闘も問題は無いけど出来れば楽に戦いたい。
私は最低威力の魔法で近くのゴブリンを攻撃する。
「ファイアーボール」
ダメージはないかも知れないがこちらに気づいてもらえるようにするには十分。
魔法を受けたゴブリンはこちらに向かってくる。
「狙い通りだね」
腰の刀を抜き構えて戦闘体勢に入る。
「グラビティーバインド」
相手の周りの重力を操り動きを止める。
一階層ではアースバインドは簡単に破られたが今回はそのような事は無かった。
普段よりも重たくなった体では自由に動くことが出来ずにいる。
私は、一太刀でゴブリンを真っ二つに切り裂く。
まずは一体。
こちらの戦闘の音を聞き私に気づいたゴブリン剣士。
「やっちゃった」
本当はこっそり近づいて倒そうと思っていたのに。
「強化筋力」
自身のパワーを上げる。
相手に先手を取られる前にこちらから先に攻撃を仕掛けるため地面を思いっきり蹴る。
ゴブリン剣士はこちらの動きを見て動きを止めて防御の構えに入っている。
それならと思い剣に対して、
「グラビティー」
剣の重さを増やす。
いきなり剣が重くなった事で剣を持っていた手が下がり防御体勢が崩れた。
その隙を突きがら空きになっている首をはね飛ばす。
二体の討伐完了。
私はドロップ品をアイテムポーチにしまって二人の元へと戻る。
「ミレイ大丈夫だったの!」
私の姿を見てすぐ二人が近づいてくる。
「はい、余裕ですよ」
笑顔で答える。
不思議そうな目で見てくる二人。
「ミレイあなた一体何者なの?」
聞かれてもしょうがないよね。
それに本当は話すべきなのかも知れない。
でも、
「すみません、今はお話出来ません」
「そうよね。冒険者同士の詮索は御法度だもんね」
「まあ……そうですね」
本当は話したいのだがまだそのときじゃない。
それに今は、
「それよりも早くグレイさん達と合流しましょう」
「それもそうよね」
私達はグレイさんの達の元へと向かう。
探知の魔法で居場所は分かっているのでそこに向けて一直線に進んでいく。
時よりゴブリンの気配があるがそこは避けなが進む。今は戦闘をするよりも六人全員が揃うのが専決である。
「これからどうなるのかしら?」
ふとアキさんが呟いた。
「そうね」
元気のない声で言うメリッシュさん。
これまでのダンジョンになかったトラップ。まだ二階層目なのにすでにギリギリの状況。
誰だって辛くなってくよね。
私は二人の声を聞いてそんな事を思った。
「どうなるじゃないですよ! 私達でどうにかしないとですよ」
二人に元気になってもらおうと声を掛ける。
「そう……だね」
なんとか笑顔を作り答えてくれる。
二人とも不安で仕方が無いんだと思う。
それでもなんとかしないとダメだ!
「それにもしかしたらリーダー達は」
「アキ! 縁起でも無いこと言わないでよね。私はグレイ達が生きてるって信じているんだから」
どうしてもネガティブな事ばかり浮かんでくるアキさんにメリッシュさんが突っ込む。
だがメリッシュさんのかなり心配のようで目から涙が出ている。
今は何を言っても二人の心配を煽るだけ。それなら少しでも早くグレイさん達に合流して二人を安心させてあげないと。
その思いから少し早足になっていく。
二人も私の後ろについてきてくれている。
「アル! ガードを頼む」
グレイさんの声が聞こえてきた。
探索で確認してみるとすでに三人は合流しているようだが、
「急いでグレイさん達と合流します」
「分かったわ!」
先程の声を聞いてメリッシュさんも何かを感じたみたい。
間に合って欲しい。それだけを思いながらグレイさん達の元へと急ぐのである。
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