第二十九話 終了後

 ゴブリンとの最初の戦闘を終えた私達、皆地面に腰を下ろして俯いていた。


 それもそのはず、まだ一階層のモンスターとの戦闘。相手は中級ダンジョンにもいる普通のゴブリン。ただし強さは明らかにこちらの方が上。一歩間違えたら全滅の危機もあった。


 今回は六人で連携することでなんとか倒すことが出来たがこれからもこんないうまくいくとは限らない。


「一階層のモンスターがこんなに強いのか」


 一番最初に声を出したのがグレイさんだった。


 いつのような陽気な声ではない。低い声で元気を一切感じない声。


「この戦闘後何回続くのよ」


 メリッシュさんの口からもネガティブな言葉が漏れる。戦闘前の強気な口調では無く完全に疲れ切っている感じの声。


 他の皆さんもぽつり、ぽつりとネガティブな声が出てくる。


 このままではいけないと思った私は、


「皆さん! まだダンジョン探索は始まったばかりなのです! さっきのような連携がとれればきっと大丈夫ですよ」


 ウソである。


 今のままではこの先災厄の事態になりかねない。そうでなくてもかなりきつい戦闘が続いていく。


 もしもの時の備えは準備しているけどあまり皆の前では使いたくない。


「そうだな、まだ探索も始まったばかりだ。それに今回当たったゴブリンがたまたま強かっただけかも知れん。それに一番年下のミレイがやる気なんだ、俺達先輩が諦めては居られないだろう」


 私の声に最初に答えてくれたのリーダーグレイさんだった。それに続き下を向き落ち込んでいたメリッシュ、アキさんと答えてくれた。


 なんとか暗くなっていた雰囲気も少し明るくなっていく。


 それでもかなりきつい。


 ――皆、もしもの時はよろしくね。



 精霊達にお願いする。


「任せな。もしもの時は俺達がなんとかしてやるぜ!」


 ライトは胸を叩きながら言葉を返してくれる。


「そうよ。私達に任せなさい」


 ライトに続きアクアも言ってくれる。どや顔でだが。


 その言葉がとても嬉しかった。


 これでなんとかなるかなと少し安心が心の中で生まれた。


 私は、皆が休憩している間にドロップ品の回収をすることにした。


 回収出来たのは、サファイヤが二つ、ゴブリンの牙と腕。


 サファイヤはトパーズの十倍以上の買い取り額の宝石。


 それに一体倒しただけで四つもドロップするのは凄い。


「ミレイ、そろそろ行くぞ!」


 グレイさんから声を掛けられた。


 皆の方を見てみるとすでに出発の準備が進められている。


「わかりました~! すぐに戻ります」


 ドロップ品をアイテムポーチにしまい民の元に戻った。


 行動を再会してから何回か戦闘はあったがなんとか連携して討伐していく。


 ときたま、探知を使いゴブリンの居る場所を見つけて避けながら行動していく。


 やっとの思いで二階層への階段を見つけて休む私達。


 次の階への階層への階段近くはS級ダンジョンも変わらず安全地帯のようだ。


 私達は、ここで昼食を取ることにした。


 二階層では何があるか分からない。今の内に体力などを回復させておく。


「どの戦闘もギリギリだったわね」


 少し元気を取り戻していたメリッシュさんがため息混じりに言う。


「そうだな、今はなんとかなっているが今のままではこの先が心配だ」


 確かに。私も気づかれない範囲で付与魔法を使ったりして手助けをしたりしている。それに今はまだモンスターも一体ずつしか出て来ないけど上に上がれば複数体出てくる。それに後四階層上にはボスの部屋がある。


「ですが、皆さんとならなんとかなると思います。それに……」


「それになんだ?」


「それに皆さんはこの街でトップクラスの冒険者なのですからと言おうと思っただけです」


 私は言おうとしていた事と全く違うことを口にした。


 本当は私がなんとしますと言おうとしていたがどんな反応が返ってくるかすぐに予想がついたために言うのをやめた。


「そうだな。俺達はこの街一番の冒険者だな」


 笑いながら言っているグレイさん。だが他の皆はそんな元気がないのか少し鬱陶しそうな顔をしている。


 それから食事を終えた私達は次の階層へと進んでいくのだった。

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