第二十四話 休日 2
「すみませ~ん」
店の奥にいる店員さんに話しかけてみる。
「子供が何のようだ」
「どうしてこのお店では刀だけを扱っているのですか?」
「ただの冷やかしか、帰った帰った」
追い返されそうになったので、
「刀の手入れをお願いします」
冷やかしでないことを言うと、
「なんだい急に」
「お願いします」
少し強引かもと思ったがパパからもらった刀を見せる。すると男の態度が変った。
「なかなかいい刀だ。少し預からせてもらってもいいか?」
興味津々の男。
「いいですよ。夕方にまたよらせていただきますのでそのときまででいいですか?」
「おお、わかった。それまでに手入れもしといてやるよ」
しゃべり方までもさっきと全く違う。
「お願いします」
お願いして店を後にして街の北側へと向かった。
昼一の鐘が鳴る頃街の北側食業区へと着いた。
丁度昼時でもあり多くの人は行き交っている。
私は受付のお姉さんに聞いた『ムーレ』と言うお店を探しながら歩いていた。その間周りからおいしそうなにおいが漂ってくる。
そして食業区の中心部に来た当たりでお店を発見した。そのお店はピンク色の外装で周りには花やなどが咲いておりとても可愛い作りになっている。すでに入り口の辺りに行列が出来ており私もそこに並び順番を待つ。並んでいるお客さんは全員女性ばかりで男性客は一人もいない。
しばらく待っていると、
ぐぅ~!
お腹が鳴った。
「ミレイ様」
フレイがあきれた顔で見てくる。
――しょうがないでしょ。お腹すいたんだもん。
恥ずかしくて顔が赤くなる。
そしてやっと私の番がやって来た。
「次のお客様中へどうぞ」
店員さんに続き中に入り席へと案内される。
私はメニューの中からパンケーキと紅茶を注文する。
周り見てみると皆凄くおいしそうにパンケーキを食べている。それを見ているとよりお腹がすいてくる。
そしてやっと注文してパンケーキがやって来た。
皿の上には三枚重なったパンケーキがのりその上には蜂蜜とホイップクリームがたっぷり掛けてある。
眼をキラキラと輝かせているミレイ。
ナイフとフォークを使い一口。
「おいし~い!」
思わず叫んでしまった。周りで食べてる人達の目線がこちらに向く。
恥ずかしい。顔が赤くなる。
立ち上がり見様に向かって一礼して謝ると、皆さん笑っている。
「は~、ミレイ様もう少し落ち着きを持って下さい」
ため息交じりに言ってくる。
何も言い返せない。
私は、急いでパンケーキを食べて店を出る。
――恥ずかしかったよ。
「それはミレイ様の自業自得です。あんな所で大声なんて出すからです」
――しょうが無いじゃん。あのパンケーキ滅茶苦茶惜しかったんだもん。
思い出すと口からよだれが出てくる。
「ミレイ様。口からよだれが」
慌ててよだれを拭き取る。
「本当に、もう少し大人になって下さい」
――は~い。
かなり落ち込みながら答える。
まだ刀を取りに行くまでに時間があった為、西側の商業区を見ることにした。昨日来たときはゆっくりと見て回る事が出来なかった。
綺麗なアクセサリーが沢山ある。それに屋台も出ている。
――フレイ、昨日来たときは気づかなかったけど綺麗なアクセサリーが沢山あるよ。
ミレイも女の子。アクセサリー類には眼がない。
「ミレイ様も女の子らしいところがあったんですね」
――それってどう言う意味かな? 私も女の子なんだよ。
「そうですね。見た目はとても可愛らしい女の子ですね。ですが中身はやんちゃで好奇心旺盛な少年と変わらないですよね」
何故か少し口調が怖いフレイ。
――まあ確かにそれは否定しないけど……。
それから他の店を見回っている間フレイは一言お話さなかった。
日も暮れ始めて来た頃、刀屋のアジルにやって来た。
中に入るとすぐ、
「おう来たか、準備出来てるぜ」
預けた刀が帰ってきた。鞘から刀を抜き見てみる。するとまっさらのような輝きをしている。昨日確認したときにあった刃こぼれも無くなっている。
「どうだい嬢ちゃん?」
「はいとてもいいです。まさか一日でここまでしてもらえるとは思ってもいなかったです」
素直に驚いている。
「そらそうだろ。俺の腕はこの街一だからな」
どや顔で言ってくる男。
「お代はおいくらに?」
「いらね~よ。その代わり、お嬢ちゃんが使う刀は俺に整備をさせてくれやしね~か」
「そんな事でいいのでしたらいいですよ。もともと私からお願いをしようと思っていたので」
「そうかい。そう言えば自己紹介がまだだったな、俺はアルベ=ムルクだ」
「私はミレイ=サルシャです。これからよろしくお願いします」
お互いに握手を交わした後宿へと戻って行くのだった。
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