第十四話 報告
日が暮れ始めた頃冒険者ギルドへと到着した。
まだ夜一の鐘が鳴る前なのか人が少ない。
受付の所にも列が出来ておらず昨日担当してもらったお姉さんのいる受付に行く。
「すみません」
「はいはいって、昨日の子じゃない。どうしたの?」
「ドロップ品の買取とダンジョン攻略の報告に来ました」
「少し待っててねって! 攻略したの初級ダンジョンを?」
「はい、しました」
「まさかソロで何て言わないわよね」
「はいソロでクリアしましたがどうかなさいましたか?」
ギルドカードを見せながら言うと、
「確かに確認いたしました。少々こちらでお待ちください」
お姉さんは奥へと消えていく。
しばらくしてこちらに戻ってくると後ろに白いひげを生やした男の人を連れていた。
「お姉さんこちらの方は?」
「こちらはこのアーミスの冒険者ギルドのギルドマスターであるゴルゾ=メガロマスターです」
なぜギルドマスターを連れてこられたのか分からずに頭を捻っていると、
「嬢ちゃんが冒険者登録一日目で初級ダンジョンをクリアしたミレイ=サルシャさんかい?」
とてもやさしそうな声で聞いてくる。
「はい、そうですがなぜギルドマスターさんがこんなところのいるのですか?」
口元に指をあてながら聞いてみると、
「その話はこっちでしようか」
ギルドマスターに案内されてギルド二階のマスター室にやってきた。
お互いに向かい合わせに椅子に座ると受付に座っていたお姉さんが二人分のお茶を出してくれた。
「さっきの話なのだがな、少し困っておるのだ」
「どういうことですか?」
確か初級ダンジョンを攻略出来たらCランクへの昇格が認められているはずだけどなぜそれが困ったことになるのだろうか?
頭の中にはてなマークが浮かんでくる。
「さすがに昨日冒険者登録したばかりの少女をいきなりCランクに昇格させるのは前例がなくてな」
確かにこんなこと早々起こるようなことではない。
「もしもこのまま昇格させると不審に思うものが現れるかもしれん」
「はい」
「なので明日ミレイ殿の昇格試験を行おうと思っておるのじゃがどうだろうか?」
何それ?
頭を傾げると、
「一人信頼のおける冒険者を試験管につけて証人となってもらう。それなら不審に思う者も出てこないと思うのだがどうだろうか?」
「はい、私もそれでかまいません」
「詳細についてはア明日伝えよう。今日はゆっくりと休んで疲れを取ってくれ」
「はい、では失礼いたします」
マスター室を後にして一階へと降りた。
再び受付に行き今回のドロップ品の査定をしてもらう。
「こちらが本日の買取金額でございます」
トレーに乗せられて銀貨二枚と銅貨十枚が出てきた。
「ありがとうございます」
アイテムポーチにしまいギルドを出ようとしたところで、
「お子様はお家帰るお時間でちゅよ」
男三人組の冒険者が絡んできた。
「すみません、どいてもらえないでしょうか? あなた達が邪魔で帰れないのですが」
「おっとそれは悪かったな」
素直にどいてくれた。
私は出口に向かって歩こうとした瞬間足を引っかけられた転んでしまった。
ドスン!
顔面から盛大に。
「いった~い!」
体を起こし立ち上がると目には少し涙が浮かんでいた。
「何するのよ!」
だが男達は知らん顔をしている。
後ろで見ていた受付のお姉さん達が誰かを呼びに行くのが見えた。
時間が経てばこの男達は何らかの罰を受けるのかもしれない。でも私今すっごく頭にきている。
顔が少し怖かった。何故なら周りの精霊達がミレイから少し離れるくらいには。
「ナッシー憑依」
ナッシーと融合して男達に一瞬で近づいて真ん中の男の腹に一撃加える。
「ぐは!」
口から血を吐きながら後ろへと吹っ飛んでいった男。
「仲間に何しやがるんだ!」
「何しやがるんだですって、あんた達から最初にちょっかい掛けてきたんでしょ」
「生意気なガキめ。調子に乗るなよ」
男達二人は剣を抜きせめて来ようとするが、
「お前たち何をやっているんだ!」
さっき二階で話していたギルドマスターがやってきて男達を止めてくれた。
ギルドマスターの言葉に何も言い返せない男達。
「ギルドマスターすみません。そこの人達に足を引っかけられたのです」
「お前たちそれは本当か?」
「……」
何も答えない。
「少しこっちに来てもらおうか」
男達を引っ張て連れて行く。
「大丈夫ですかミレイさん」
受付のお姉さんがすぐに近づいてきてくれた。
「大丈夫ですよ。ご迷惑をおかけしました」
一礼する。
「そんなことございません。あの三人組は私達の見えない場所でいつも新人の冒険者にちょっかいをかけていたのです」
「でもなんで今回はこんな所でちょっかいをかけてきたのでしょうか?」
「多分先ほどの話を聞いていたからではないでしょうか?」
つまり、新人冒険者がいきなり初級ダンジョンをクリアしてその上ギルドマスター室にまで案内されていた。自分達はまだなのに。
「嫉妬したってことですか?」
「そうなりますね」
なんじゃそら。
心の中でそんなことを思った。
「それでは居今日は失礼いたします」
ギルドをでて宿へと戻っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます