第六話 戦闘
セレミネス村を出てから半日が過ぎていた。
「半分くらい来たかな?」
ここまでの全力ダッシュ。それに合わせて久しぶりのリミット解除で少し疲れていた。
「ミレイ、少し休んでもいいんじゃない」
「これアクア、ミレイ様にため口はおやめなさいといつも言っているでしょ」
話し方をフレイに注意されるアクア。
「うるさいな。ミレイは何も言わないじゃない」
「それは関係ありません。ミレイ様は私達の主様なのですから」
「ミレイ、ダメなの?」
「私はどっちでもいいよ」
それを聞いたアクアは、
「ほら、ミレイだってどっちでもいいって言ってるじゃないか」
その言葉に対して、
「ア・ク・ア~」
「逃げろ~」
アクアは怒られる前に逃げて行く。
それを追うフレイ。家にいたときからいつも見ていた光景である。
「フレイ、それくらいにしてあげて。きっとアクアも反省してるよ」
「ですが……分かりました」
何か言いたげな様子だったが、了承してくれた。
フレイの怒りが収まったのを感じたのかゆっくりと戻ってくるアクア。
「アクアもあまりフレイを困らせちゃダメだよ」
「は~い」
少し落ち込みながら返事を返す。
そんなアクアの事を無視して、
「そろそろお昼にしませんか?」
今の空気を読まず風の精霊のウインディーが言ってくる。
「そうだね。お腹すいてきたしお昼にしよっか!」
私もウインディーの提案に乗る。
丁度近くに大きな木があり陰になっていた。私は丁度いいと思いその下で昼食を取ることにした。
お弁当はママが家を出る間前に持たせてくれていた。
精霊達のご飯は魔力である。そのため私の魔力を少し分け与えるだけで済む。
「ミレイ様ありがとうございます」
魔力をもらいお礼を言うフレイ。それに続きアクア、ライトと順番に魔力を分けていく。
そして皆に魔力を分け与えて自分のご飯を食べようとしたそのとき、
「ミレイ様、近くにモンスターの反応を感知しました」
ナッシーから近くにモンスターがいることが告げられる。
「数はどれくらい?」
「一体ですが、こちらを狙っているようです」
「はぁ~」
――何もなくアーミスの街に着けると思ったのにな。
心の中でそんな事を呟きながらため息をついてしまった。
「ナッシー、ウインディー憑依」
二体の精霊を憑依させる。
無属性魔法の察知を使いモンスターの位置を確認。
「近いな~」
そんな事を呟きながら腰に下げていた刀を抜き構える。
反対側の木の陰からモンスターが姿を現わした。
「ミレイ様、あれはレッドウルフと呼ばれているモンスターにございます」
モンスターについて教えてくれるフレイ。
レッドウルフは全身に赤色の毛を持ち口には牙を持っている。
「レッドウルフの特徴は牙での攻撃と俊敏性にございます」
凄く詳しい。
「フレイ、なんでそんなにモンスターに詳しいの?」
「昔の記憶は殆ど消えていましたが、精霊魔法の事以外にモンスターの情報も残っておりました。そのためレッドウルフも見ただけで気づくことが出来ました」
なるほどと納得する。
フレイとそんな話しをしていると、レッドウルフが今にも飛びかかってこようとこちらを伺っている。
慎重なレッドウルフを見て意外だと思ってしまうミレイ。
瞬きをした瞬間の隙をつき襲いかかってくる。
真っ正面からの攻撃。その攻撃に合わせて刀を振り下ろして一刀両断で倒す。
「お見事にございます」
「見事なお手前でございました」
精霊達から歓声。
――私レッドウルフ一体を倒しただけなんだけどな。
顔を赤くして照れるミレイ。
「解除」
小声で憑依を解く。
それと同時にさっき倒したレッドウルフが消えて一つの宝石に変わった。
この世界のモンスターは倒すと宝石へと変わる。どんなモンスターでもそれは変わらない。ただしダンジョンで倒したモンスターは宝石だけでなくアイテムもたまに落とす事がある。
「ミレイ様、さっきのモンスターが宝石に変わったぜ」
ライトが知らせてくれる。
宝石を拾い、検索で宝石を調べと、トパーズと言う宝石であることが判明した。
とりあえず宝石を異空間収納にしまった後、食べ損なっていた昼食を食べて、再びアーミスの街に向けて出発した。
日が沈み始めた頃街へと到着した。
街の入り口には門番はおらずに簡単に通ることが出来た。
街の中は仕事から戻ってくる冒険者など沢山の人が行き交っている。
――皆凄いよ。こんなに沢山の人見たの私初めてだよ。
心の中で精霊達に話しかける。
「本当に凄いぜ! 人ってこんなにいるんだな」
「何を言っているのですか、世界中にはこの数百倍以上の人間が住んでいるのですよ」
「マジかよ! すげ~な」
ライトとアースは街の人達を見てはしゃいでいる。
――街って凄いね。村とは全然違う。
店に灯る明かり、行き交う人々街に出ている沢山のお店。全てがセレミネス村と違う。その事に驚いていた。
「ミレイ様、街に着いたら行くように言われている場所がありませんでしたか?」
フレイの言葉を聞き、ママから言われていたことを思い出した。
――ありがとうフレイ。もう少しで忘れるところだったよ。
ミレイは近くの店で教会の場所を聞き向かうのだった。
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