第5話

今日は大堀の家に行ってきた

僕と違って大堀がいじめられてないのは今日会った幼馴染のおかげだと大堀は言っていた。

幼馴染はさや子さんと言って2つ上の中三だった。


「たっくん(大堀)と一緒の施設に居たけど私は小三で出てきたんだよねー。

だから途中離れ離れになっちゃってたけどまさかまた会えるとはねー笑」


花も恥じらうような笑顔でそう言っていたさや子さんはとても可愛くて僕は一目惚れに近かった。

帰ってからも僕は上の空でさや子さんのことばかり考えた。

これが僕にとっての初恋だ。


後で大堀に聞いてみると大堀はさや子さんが好きじゃないらしく僕は全力でさや子さんと接点を持てるようにした。


彼女は女子バトミントン部だったから僕は男子バトミントン部に入った。

練習は大変だったし同じクラスにやつからはいびられたけど先輩や他にも新しい友達ができた。


修作の日記 7月12日

今日の練習試合で初めて勝てた

最近体力もついて力も少しだけど強くなった。

いじめもなんだか少なくなった気がする

さや子さんには感謝しかない。


人生山あり谷ありってよく言うけど、僕の場合丘で谷が深すぎる気がする。

さや子さんと大堀が付き合っているという噂を聞いた。

一緒に映画に行っているところを女子が見たそうだ。

委員会は2週間に一回でそこでしか大堀とは喋れない。

それまでの6日間、僕は胃に穴があく様な思いで過ごしていた。

待ちに待った委員会の日、僕は開口一番噂の真偽を聞いた。

大堀は黙って俯くだけで何も言わなかった。そして一言



「告られたんだし、仕方ねーじゃん(笑)」



『裏切り』という言葉が閃光のようにまず頭に浮かんだ。

次に『友情』だった。

僕は怒らなかった。

彼の裏切りより友情に重きを置いてしまったから。

違う、怒れなかったんだ。

僕は人に抵抗する術を知らなかった。

僕は弱かった。

「あー……なら仕方ないね笑」

何が仕方ないだ。仕方なくないだろ。

あいつは俺が好きだって知って付き合ったんだ。

「だろ?断るのも悪いしな!」

じゃあ俺の気持ちを踏みにじるのは悪くないのか

俺の中の俺が叫び出す

自分の中のドス黒い感情は表に出ず、暗く重く深く僕の心の中で巣食い渦巻くのを感じた。

どうしようもない敵意と害意が怒りという形で表情に現れそうで抑えるのに苦労した。


それから僕は部活にもいかなくなった

彼女の姿を見るとなにをしでかすか自分でもわからなかったから

またいじめは酷くなった

僕はもう友ができる気がしない

人を愛せる気がしない

死にたい

侘しい

寂しい

悲しい

不幸な人は神などいないというらしい

当たり前だ、あるのは不条理なんだから

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

そして彼は命を絶つ K @syusaku8kipposi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る