第2期短編集「ディディモス・ユダ・トマス」(2017~2019)

 カクヨムデビュー以後の作品集です。第1期とくらべて短い話が多いです。


 このころになると自分なりの主題意識がはっきりしてきますね。そうした自分の心情と重ね合わせるようにして広い意味での「アイデンティティ」という主題が前景化してきます。


「ディディモス・ユダ・トマス」とは12使徒の1人トマスのことで、「ディディモス」と「トマス」はともに「双子」を意味します。ああ、なるほどとうなずいてもらえる並びになっているのではないかと。


「海」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054885295771

 カクヨムでの活動を本格的にスタートさせた掌編集「芽」の巻頭を飾る1作。覚えてもいない故郷を想う話です。


「Re:死神の通告」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054885331548

 他人の作品を自分なりにアレンジする企画から。まあ、音楽アルバムにおけるカバー曲のような位置付けとお考えください。なんてことのない社会人の日常からの目覚め、遁走を描いた話。海に対して今度は港町横浜から山へ向かいます。


「アンドロギュノス」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054888581402

 山に魅了された男を恋人視点から描いた話。現代においてもなお人々の恋愛観の基盤を成しているアンドロギュノスの挿話を使ってみました。


「冬は何度でも」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054886247367

 2組の男女を重ね合わせて語られる、恋。これも言ってしまえば、アンドロギュノスです。


「丘の上の魔女」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054885561659

 幼い双子の姉弟が最後の家出を敢行する話。恋愛色はありませんが、これもやはり双子という強い結びつきを描いています。


「真夏の夜の……」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054888907869

 片割れとの別れの瞬間を描いた話。


「バードガーデン」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054888103707

 別れてもなお心に残り続ける少女の話。


「the cat's meow」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054882861809

 またも家出の話です。姉弟というモチーフも反復されます。片割れと別れるべきときに別れられなかったらというifの物語でもあります。ここから5作続けて女子中学生が主人公です。


「吸血鬼とポーカーフェイス」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054885534352

「the cat's meow」の最後同様、洋館を異界と見立て舞台とした話です。よるべない少女の自己回復の兆しを描いています。


「ハレンチ学園演劇部オーディション」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054885331548

 やはり一種の異界とも言うべき場所で、少女の自己回復が行われる話です。


「絶滅の園」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054888522615

「ハレンチ学園演劇部オーディション」の原案とも言うべき話です。部活を通した自己回復という主題をもうちょっとわかりやすく書いています。


「鏡よ、鏡」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054888564401

「絶滅の園」の後日談とも言うべき内容。わかりづらい話なんですが、この並びに置くことで主題がクリアになるかなと。


「喫茶カテドラル」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054885331548

 ヘミングウェイの「殺し屋」を下敷きに、氷山理論の実践に挑んだ1作。喫茶店にやって来た人殺しと常連客たちのやりとりを心理描写を排して描いています。これも難解なんですが、この並びならわかってもらえるかなと満を持して配置しました。


「こちら、南区」

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054885295771

 ボーナストラックのイメージです。お気に入りの街さいたま市南区を紹介した話です。戸松作品はなぜこの街が舞台でなければならないのかということを説明しています。さっさとこのシリーズの本編を書けという発破の意味合いもあります。

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