第32話 今度は猫
「……ってことがあってよ」
「フフフッ…本当に君は面白いね」
「笑い事じゃねぇよ
変な事に巻き込まれるわ
王女殿下には噛みつかれるわ
公爵令嬢は変なことを言うわ
1日の出来事で変な注目が集まるようになった」
「注目をされる事はいいことではないか」
「変な注目って言ったろ
不思議そうな目で見られる気持ちがわかるか?」
「んー…猫と話しをしている時点で不思議な人ではないかい?」
「お前が猫に化けてるからだろうが!!!」
大広間での一件から1日が経ってから学園内で変な視線を集めるようになった
フリード殿下に決闘を申し込まれ、ディヴァイエン公爵令嬢に助けてもらい
怖くて有名な生徒会長のヴィネット王女殿下に首を噛みつかれた
最後のいらないだろ!
何で噛みつかれなきゃいけないんだよ!
そんな事があり、猫に愚痴を溢しているんだけど…
勘違いしないで欲しいのはコイツがただの猫ではなく、黒い狼が今度は猫になっているんだ
何で毎回動物なんだよ!ふざけんな!
「僕はいつも人型になって会っても良いと言っているじゃないか」
「お前は碌でもないことを思いつくからダメだ」
「碌でもないこと?」
「お前がやりそうな事は大体予想できる」
コイツは絶対、場をかき乱して面白くしようとするからな
「僕の行動を予想できるんだ…やだ照れる」
腹立つわぁ〜〜!
イラつくぅ〜〜!
今すぐコイツに拳骨を喰らわしたい!
いや…待て待て
今ここでいらついたらコイツの思う壺だ
深呼吸だ深呼吸
「ふっーー…」
「…つまんないなぁ」
「ふん…お前はそういうところだよ」
「?、どういうところかわからないね」
素でコレだもんなぁ
嫌になるぜ
「…それで元凶達はどういった感じになっているんだい?」
「…フリード殿下は王位継承権の剥奪とディヴァイエン公爵令嬢との婚約破棄
他の奴らは婚約者との婚約破棄と廃嫡」
「御令嬢はどうしたんだい?」
「ん?……………あぁ、男爵令嬢ね
…どうなったんだろうな」
そう言えば…そういう話は全く聞かないな
あの時、王女殿下はフリード殿下の王族として意に反する行動に激怒していたからか、男爵令嬢は眼中に無いって感じだったが…
そもそもの原因を作ったのは男爵令嬢…
男爵令嬢が殿下達を誑かさなければ今回のような事は起こらなかった
というか何で俺は巻き込まれたんだ?
んー…何か嫌な予感がする
「乙女ゲームの一大イベントを潰されたんだからね
何かはしてきそうだよね」
「何かって何だよ」
「本来であれば、公の場で公爵令嬢を断罪してハッピーエンドを迎える…といったところだけど
そのイベントでイレギュラーが生じてしまった
断罪されそうになったのは公爵令嬢ではなかったんだから令嬢は不思議に思っただろうね
公爵令嬢を断罪して殿下達と結ばれるはずなのに殿下達が断罪しようとしたのが君だったんだから
フフッ…笑える」
「笑えねーよ」
「フフッ…まぁ、イベントに失敗した令嬢が次何するかは何となく読めるよね」
「は?」
「攻略対象を君にするんじゃないかなぁ
キャラ設定されていない君をどう攻略するのかは見ものだけどね」
コイツはさっきから何を言っているんだ
「俺の何を攻略するっていうんだ?
そもそもおとめげーむってなんだよ」
「簡単に説明すると身分違いの恋を成就させる為の遊戯」
「何だそれ」
「今回で言えば男爵令嬢が婚約者がいる殿下と結ばれるみたいな感じ」
「奪い取ってんじゃねぇか!」
「それが乙女ゲームの醍醐味だよ」
「そんな醍醐味があってたまるか!」
要は自分の幸せの為に恋敵を破滅させて想い人を奪い取るって事だろ?
そんな性格の悪い奴が作ったような遊戯があるわけねーだろ
「わかってないね
禁断の恋でも好きな人と結ばれる為に苦難を乗り越えていくのが面白いんじゃないか」
「それのどこが面白いんだ
俺にはその面白さがわからん」
「君も恋をすれば面白さがわかるんじゃないかい?」
「あほ」
恋をしたところで何か変わるってんだ
「フフッ…それで変わる君じゃないか
だから君は面白い」
「バカにしてんのか」
「褒めてるんだよ」
「どこを褒めてんだよ」
「いくらルートを修正しても君だけが思い通りにならないからね
どうしてもシナリオ通りに進まないから攻略しがいがある」
「攻略?何言ってんだ」
「数ある乙女ゲームでここまで攻略の糸口が見えないキャラは初めてだよ」
さっきから何を言っているのかわからんが…
今回の騒動に関係がある話をしている気がする
コイツ…まさか裏で何かやってないだろうな
「お前…何かやったろ」
「何かって何だい?」
「正直に吐け
答えによっちゃあ…」
「……僕に脅しが通用するとでも?」
「俺が脅しをするとでも思ってんのか?」
………
「そんな殺気をただの猫に向けないでくれよ
怖くて震えてしまうじゃないか」
「同等の殺気を向けてくる猫が言うセリフではないな」
…………
「……僕は何もしていないよ
僕らは只、事の結末を外部から見届けるだけ
偶に手下を使って操作したりするけど、直接は手を下さない
余程のことがない限り僕らは干渉しない
それが僕らの間で決められた数少ないルールの一つだからね」
「……本当だろうな」
「本当さ
僕は嘘が嫌いなんだ」
…コイツはふざけたことを言うけど嘘は言わない
だからコイツの言うことは信用できる
てっきり少なからず関わっていると思ったんだけどな…
…当てが外れたか
「…チッ
じゃあ俺は本当に巻き込まれただけか?」
「そうとも言い切れないんじゃないかな」
「あ?どういうことだよ」
「僕は全てを知っているわけではないからね
僕の知らないところで何が起きていてもおかしくはないって話さ
君が巻き込まれたイベントは僕の知っている乙女ゲームのルートだった
でも僕の知る限りでは乙女ゲームに君も生徒会長も出てきてはいないんだ
これは僕の予想だけど、乙女ゲームの世界とは別に何か別の世界が混じっているんだと思うんだ」
「別の世界?」
「ここはゲームであってゲームではなく
現実でゲームみたいなことが起こっている
その中で乙女ゲームの世界に別の世界が混ざってしまって、乙女ゲームの世界のルートと別の世界のルートが交差して不具合が生じて、一大イベントに君が巻き込まれてしまった……と僕は考えているわけだよ」
乙女ゲームの世界と別の世界
…何を言っているのかさっぱりだ
そもそもコイツの話は信憑性がない…んだけど
コイツ…嘘つかないからなぁ…
だから厄介なんだ
「…ということは誰かが裏で画策していると考えるのが妥当ではないかな
何かを企んでいる…そんな感じがするね
まぁ…もし僕が同じ立場であれば
ここでやることは確認だけして、目的に支障が無ければそれには触れないってところだね」
「…そうか」
確認…ね
今の話から察するに、この国にはコイツが触れたくない何かがあるということね
触れたくないもの…面白くないものか?
そんなわけないか
もう…何が起ころうと俺には関係ない
俺は今回の一件で疲れたんだ
「そんな考察を聞かされても俺は何もやらないぞ」
「君に何をして欲しいとか思って話しているわけではないよ
僕が一人で勝手に話しているだけさ」
「……なら俺を見て話すんじゃねぇ」
「これは失礼したね
頭の中を整理をしていたら声に出てしまっていたようだ」
「そういうのは一人でやってくれ」
「次からそうするよ」
…やっぱりコイツとの会話は疲れるな
コイツが来るといつも長話をして、楽しませてしまうな
毎回訳のわからん話を聞かされる…だからいつも疲れるのか…
まぁ…コイツの話を聞いては反応をする俺も悪い
次から気をつけよう
「フフッ…また面白いことが起こりそうな予感」
「なんて?」
「何でもないよ
…じゃあ僕はもう満足したから帰るよ」
自分が満足したら帰る
本当に自分勝手で自由な奴だ
はぁ…
今日はもう疲れたから茶でも飲んでゆっくり過ごそう
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