第22話 ローナvsワーウルフ②
(………からだあつい)
ローナは全身から血を流してその場に立ち尽くし、流れ落ちた血は体を伝い地面に血溜まりができるほどにまでになっていた。
ワーウルフに傷をつけられた箇所は熱くなり、意識は朦朧として視界はぼやける
限界を迎えていつ倒れてもおかしくない状態だった
ローナの状況を見て何人かの冒険者が駆け寄ろうとしていたがワーウルフにそれを止められ誰もローナを治癒できずにいる
そしてワーウルフがローナの前で何か話をし始めるがローナの耳には何一つ入らない
既にローナの戦意が喪失していると誰もが思った
実際、ローナの現在の
〈鑑定〉を使えばわかる事だが、ワーウルフの
この戦いでワーウルフがローナから受けた攻撃は全てがかすり傷であり、ダメージは一つも入っておらずワーウルフとの決定的な
この世界において
因みにSランクは40以上となる
依頼の難易度も
今回の[スタンピード]の難易度はBからSくらいであるが、それはワーウルフがいなかった時の難易度
今この場にいる冒険者が全員で挑んでも全滅するのが確実だった
その中で
勇者は魔王を倒し世界に平和を齎す英雄だが、そのためには魔王を為の強さを手に入れなければならなかった
例え聖剣を持っていたとしても一定以上の実力がなければ魔王を倒すことはできない
勇者は強敵を倒し続けて
だから勇者には成長の限界がない
強敵を倒し続ければ自然と
それが使命によって神から勇者に与えられたギフトであった
だから今回、勇者はワーウルフと戦わなければならないが、勇者もまたワーウルフに戦意を喪失していた
勇者がそんな感じになっているので、ローナに期待するしかなかったが
一方的にやられているローナを見て、冒険者たちはローナが負ければワーウルフに勝つなんて絶対に無理だと誰もが諦めていた
そしてローナは…
(身体は血だらけ… 剣はボロボロ… 魔力も殆どなし…
右足と左手は力が入らないし… 視界がぼやけて見えていない…
この状態で後どれくらい動けるか… 動けたとしても2分くらいが限界…
………
相手はまだ余裕がある… それはそうか…一撃も相手を怯ますことができていない
そんな手負いの私が…ここからは逆転するのは不可能…
どれだけ攻撃を当ててもダメージが入らない…
思いついた攻撃が通用しない… これが圧倒的な
もう勝てるイメージが湧いてこない… 安全に私の負けだ…
師匠がここにいたら何て言ってただろう… この状態でも何の問題はないと言っただろうか…
フフッ… そうだよね… 言うよね… 師匠は厳しいから…
でももう……無理だ ごめんなさい師匠… 私はこれが限界みたいです…
ごめんなさい… 一度救ってくれたこの命はどうやら師匠の時間を無駄にしただけだったみたいです……
師匠の後ろを歩くことはできなかった… 私にはその資格がなかった…
あぁ不思議とあの時よりかは……心がすっきりしています
もう……大丈夫… 悔いはない……
ごめんなさい師匠… もう休みます…
最後までご迷惑をおかけしました……)
ワーウルフはローナのところへ歩み寄ると、何の反応もないローナを見て
もうこいつは諦めているのだと悟った
自分とここまで渡り合える生物は封印される前でも殆どいなかったので、ここでローナを殺すのは惜しいと思い、少し寂しい気持ちにもなっていた
「じゃあな好敵手 苦しむことがないように一撃で殺してやろう」
右手に魔力を溜め、鋭い爪をローナの首元を目掛けて振り下ろす
ワーウルフの爪が首に当たるまでローナは走馬灯を見ていた
両親と兄弟の顔、冒険者に登録をした時の光景、そしてエルに鍛えられた日々やエルと過ごした時間が鮮明に映し出され、ローナの口角が少し上がった
優しい両親の顔が好きだった 国に騎士として仕える兄を尊敬していた 口は悪かったが最後まで冒険者になることを泣きながら反対した妹が大好きだった 冒険者になって心配して気にかけてくれた近所の人お姉さんとの時間が好きだった
そしてエルと過ごした日々が何よりも楽しかった キツイこともあったけども、エルにだけ敬語を使って話す時間が本当に楽しかった
エルは最後まで敬語で話すのを嫌っていたがローナにはエルと敬語で話す時間が心地よかった
ローナは最後まで幸せな光景を最後まで見ていた
そして爪が首に触れた時、ローナの人生は終わりを迎えようとしていた
だが最後にある光景が浮かんでくる
エルとの特訓の日々の最後の夜に言った言葉
「ローナ お前はここ数日である程度の実力を身につけることができた
もうそこらへんの雑魚には負けることはないだろう」
「はい」
「ただ一定の強さを持ったには絶対に勝てない」
「……え?」
「お前の今の実力は
この世界の平均の
でもそれは人間の基準で魔物の一定の強さは人の平均をはるかに上回る
人が魔物と同じ
そういう
「…でも勝つことはできるんですよね?」
「まぁな ただ一つ
「……それなら 相手が自分よりも倍以上……
「………そんな 不利な状況を覆すことができるのはこの世界は勇者だけだろうな
でも一つだけ勝つ方法はある ただ普通に生きたいのであればおすすめはしない」
「それはどういった方法なのです?」
「知らない方がいい 話せば効果が出ないみたいだしな
一つだけ言えることがあるとすれば……」
(その先…師匠が何を言っていたのかが思い出せない…
でも今更知っても遅い …もう関係のないことだから
結局、私には才能がなかったというだけである
それは最初からわかっていたことだった
わかってた わかってた わかってた わかってた………)
………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
………………………ッガ。
「何!?」
ワーウルフがローナの首を刎ねようとした時、ローナに腕を掴まれた
確実に殺しに行ったところで止められ、ワーウルフは一瞬だけフリーズする
そしてローナを見ると全身から赤黒いオーラが立ち上っていた
ワーウルフも腕を握りつぶすような勢いで掴んでいるとさっきまで死に顔だったローナが顔を上げた
「|そんなことはわかってんだよ!!!」
そのローナの表情にワーウルフは怯み、余りの予想外の状況に笑ってしまっていた
「…………これはどういうことだよ」
この勝負はまだ終わっていなかった
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