第19話 原因判明

さてさてどうするか


スタンピードの発生の原因を探ると言っても可能性は複数ある


原因を探ろうとして全ての可能性を調べたらキリがない


スタンピードが発生してから動いた方が確実ではあるし、既に俺の中で原因はある程度絞れている


シシリーがわからないのはあいつがポンコツだからだ


俺は女神シシリーがポンコツである事を知っている


もう尊敬するくらいのポンコツ


前にもこういうことがあった


原因がわからないと言っていて、俺が確かめにいくと「明らかに原因コレだろ」っていうのがあって、なんでコレが分からなかった?ってなった


そんな訳でシシリーの言う事は9割信じていないし、最初から自分で調べた方が早いが


一応シシリーは女神なので1割は信じている


その1割でスタンピードが起こると言う事だけだが


今回はそうではない


シシリーの奴は何かを隠していたからだつた



「……どうしようか」


「何がです?」


「スタンピードの原因を調べると言ってもできることが限られる


それにこの辺りに何がどこにあるのかさっぱり分からん


だからどこでスタンピードが起こりそうか検討つかない


闇雲に動いても疲れるだけだ」


「……成程、それなら

「「私が案内をしましょうか?」」


「ん?」



あれ?今一瞬ローナと違う声が聞こえた?


違和感を持ち、後ろを振り返ると


ローナとは別に神官がそこにいた



「……俺に何か用か?」


「はい」


「そうか…じゃあ何で杖を振りかぶってるんだ?」


「コレが理由だからで・す・よっ!!」



マジか、こいつ思いっきり顔面に振り下ろしてきたよ


こんなのまともにくらったら鼻が潰れるくらいじゃすまないだろうな


かと言って避けたらムキになって何をしてくるかわからないし


どうしたものか


…とか考えていたら神官が目の前から消えていた



「…あれ?どこいった?」



ローナが下に指を刺していたので足元を見る


…神官が倒れていて、俺は神官の杖を持っていた



「見事な顎への一発でした」


「へ?」



一部始終を全部聞くと、顔面目掛けて振り下ろした杖を左手で巻き取って奪い、流れるように神官の顎を右手で撃ち抜いたらしい


そのあと神官が糸が切れた人形のように崩れて倒れた


完全に無意識で体が動いてたよ



「完全に伸びちゃってますけど」


「…責任を持って起こすよ」



気絶している神官にポーションをぶっかけて頬をペチペチと叩いて起こす



「起きろー」


「…ん」


「大丈夫か?生きてるか?」


「……何か目の前がグルグルしてます」


「そりゃあ脳が揺れてますからね」


「ローナさん黙ってなさい」



余計なことを言うんじゃありません


思い出してまた殴りかかってきたらどうする


ここは何も触れずに本題にいった方がいい



「さてさて神官さん、一つ聞きたい


この近くにダンジョンかそれとも何かが封印されてるとかいう場所はないか?


それか魔物が集まりやすいところとか心当たりないかな?」


「へ?」


「そうそうあのポンコ…女神が言ってたことを調査するにはこの辺りに詳しい奴に聞いた方が早いと思って聞いただけだ」


「…この辺りはダンジョンも何もありません


ただ…女神様からの神託で聖剣を取りに向かった時なんですが」


「聖剣?」


「聖剣を取り囲むように周囲に魔物が密集していました」


「……あの勇者が持っていた聖剣か


……ん?まてよ?


あの聖剣、岩か何かに刺さっていたか?」


「はい刺さっていました


その聖剣を勇者様が抜きまして


そしたら魔物がいなくなりました」



スタンピードの原因の多くはダンジョンから魔物が漏れ出しているという事、若しくは強力な魔物の封印が解けかけて魔力が漏れ、近くの魔物が凶暴化しているという事なんだが


神官の話によるとこの辺りにはダンジョンも無く、何かが封印されているというのも無い


しかし聖剣を取りに行った勇者たちが、聖剣を取りに行った場所で、聖剣を取り囲むように魔物が密集していた


そして聖剣を抜いたら魔物がいなくなった


という事らしい


そこで考えられるのは



「聖剣を抜くときに勇者は何かしたか?」


「? いえ特に何も無くスポッと抜いただけですけど」


「…聖剣はいつ抜いた?」


「えぇっと…昨日貴方達とお会いしたちょっと前です」


「…そういうことか…なるほどね


ローナさん」


「はい」


「原因がわかりました


お前は神官を連れて勇者と冒険者を連れて聖剣が刺さっていた場所に向かってほしい


「もうわかったのですか?」


「うん 原因は女神と勇者」


「え!!?」


「だから聖剣が刺さっていたところが発生源だからお前らはそこに向かって対処しろ


もう手遅れかもしれなけどな」


「わかりました


師匠はどうするのですか?」


「俺はちょ〜〜っと別に調べたいことがあるから一緒には行けない


心配しなくても後で合流する」


「わかりました 行ってきます」



素直で聞き分けのいい子だ


少し圧をかけたから素直にいうことを聞いたのかわ測らないけど、ローナはスタンピードを対処していた方が被害は少なくなるはずだ


それとも女神に原因があるとわかって教会に俺が殴り込むと思ったのかな


それで女神と喧嘩して巻き添えを食うと思ったのか


でも今は女神と喧嘩する事はない


女神に原因があるとわかっても

「あぁ、やっぱりポンコツだった」

と思うだけだから


しかしあの野郎女神には後で泣くまで罵倒してやる



…話を戻そう


スタンピードの原因は勇者が聖剣を抜いた事による封印の解除だ


うん勇者が原因


何を勘違いしているのかわからないが、聖剣は鍛治師が長時間魔法を注ぎ込み、100本剣を作って1本できる武器


そして最後に聖霊の力を加えてやっと完成する


決して森深くの岩に刺さっているとかは決してあり得ない


お伽噺じゃあるまいし、そんなところに聖剣が刺さってることは普通に考えてない


でも実際に聖剣が刺さってる事はあるんだけど、その場合は何かを封印している時


強力な魔物を封印する時に聖剣を刺し魔力の流れを止めて仮死状態にする事によって封印している


魔物が一体ではない時には魔導具を使い地面に埋め、聖剣を刺して魔力の流れを止めるという方法がある


聖剣を地面に刺さっていることがあるのはこういう理由がある


それでも聖剣を抜くこともある


それは封印を強化するためとか弱まっていないかを確認するためなんだけど


その際、ただ抜くだけでは封印が解けてしまう


じゃあどうするか、聖剣に自分の魔力を聖剣に流し込み、聖剣に力を貸している聖霊の力を借りれば一時的に魔力の流れは止まったままになるから、聖剣の代わりになる魔導具かなんかを使えばいい


そうすれば封印はそれなりに維持するが、あの女神バカは勇者に何も言わずに聖剣を取りに行かせたのだろう


「そういえば何故か地面に聖剣が刺さっているのがあったね?


誰も使わないなら勇者が使えば良くない?」


とかなんとか言ってたんだろう


バカだからな



「本当にポンコツなのは変わらないな あのバカ女神」



本当に変わらない


女神の場合、変わる方が難しいかな


でももう少しはあのポンコツがまともになってほしかった


一生無理だと思うけど


神は全員が完璧ではない


人と同じように神にはそれぞれの個性があり、良いところがあれば悪いところもある


女神シシリーの場合、その個性がポンコツであったということだけ


女神シシリーは顔も見た目も性格も良い、どれもパーフェクト


ただ口を開けばポンコツなだけ


……何だろう、頭が痛くなる


しょうがないか それがシシリーなのだから


まぁスタンピードの原因はわかったし、それとは別に少し気になることがあった


俺はそっちの対処をすることにする


何でシシリーはこの程度のことを隠していたんだか


まぁ…スタンピードの方は…ローナがいれば大丈夫だろう



そっちはそっちで頑張ってくれ

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