第16話 合格した

後処理中…って言っても、やっているのはローナの宥める事だけど



「わるかったって」


「絶対に許さない!!」



ギルドマスターと打ち合った際に折れた刀身がローナの顔の近くを通過して、後ろの壁に刺さった後、ローナはこんな感じ


口調も変わった


刀身が当たりそうになっただけで何でこんなに怒るんだよ



「はぁ、めんどくさいなぁ」


「今なんて言いました!?」



今のが聞こえたのか


いい耳してるな



「もう絶対に許さない!」



ならチラチラとこっちの様子を見るんじゃないよ


「あんなこと言っちゃったけど大丈夫かな


でも後に引けなくなっちゃったし」


って態度にでてるぞ


面白いなぁ



そんな事より試験の結果はどうなんだろう


S級冒険者パーティーの魔法使いがギルドマスターに回復魔法をかけているが、それじゃあダメだ



〈回復ヒール〉」



ギルドマスターは相当無理をしたようで、酸欠、魔力枯渇、魔法で無理やり強化した反動、両腕の肉離れ


そりゃ、回復もすぐにとはいかない


でも決定的なのは俺の一撃が思ったよりも内部にダメージが入っていた


でも問題ない、すぐに治した


俺が回復魔法をかけた後、ギルドマスターが気が付き、起き上がる



「無茶しすぎだろ」


「自分でもわかっている


だがここまでやられると…


自信を無くしちまう」


「十分強いだろ」


「何言ってやがる


汗をかかねぇ、息切れもしねぇ、ましてや仮面をつけたままで動いている奴に言われても皮肉にしか聞こえねぇよ」



そうか?そんな事ないと思うけどな


でも俺が何を言ったところでギルドマスターは落ち込むだろう


なのでローナに任せようと思い、ローナを見ると


睨まれた


まだ怒ってんのか あいつもあいつでめんどくさいな


うーん、何かないか ……あ



「そんな落ち込むことでもないだろ


ガァリアロで作った武器を扱えるんだし、鍛え方を間違えなければお前はまだまだ伸びる」


「[地龍]ガァリアロを知っているのか」


「有名だしな


しかしまぁよく倒したもんだ」


「そうだな


奴は俺の冒険者生活の中で最強の敵だった」



だろうな


本来ならガァリアロは人間に負けるようなドラゴンじゃない


ギルドマスターが倒した時、ガァリアロは万全の状態じゃなかった


アレとの戦闘の後、連戦続きで実力の半分も出せていなかっただろう


負けはしたが[地龍]ガァリアロは竜王の一角だった


それが負けたとなると人はこの世界の頂点にいるべきは人間だと思い上がる


たった一度の勝利、しかも全力じゃない相手に何で調子に乗れるんだろうな


でもギルドマスターはそこのところはよくわかってるみたいだけど



「で?俺の試験の結果は?」


「あ?合格に決まってんだろ


お前の場合、実力は文句なしのS級だが、登録したてのやつがS級ってわけにもいかねぇからな


最初は一番下のF級からの登録だ


ただ、それだけの実力がある奴を簡単な依頼で遊ばせるわけにもいかないからな


お前には依頼の制限をかけない


FからSの依頼をどれでも受けれるようにする」



ギルドでの依頼はFからSの危険度で分けられ、受けられる依頼が決まっている


これによって自分のランクより危険度が高ければその依頼は受けられないということになる


でも俺の場合、そういった制限がなくなる


これはあくまでも例外


過去に登録してから制限がなくなるなんて過去に一度もないみたいだ



「後は受付でカードを貰え


それで今日は終わりだ」



ようやく終わったか


まさか登録だけで二回も戦うことになるとは


別にいいけど


ちゃっちゃと受付に行ってカード貰ってどっかの宿で寝よう



「師匠?」


「ん?」


「何か言う事は?」


「?」


「さっきの事を誤って」


「……本当に面倒な女だな」


「はぁ?面倒って何!?訂正して!」



コイツこんなキャラだったっけ?


益々変な感じになっていってるけど


これ本当にローナの素なのか?


……どうでもいいか


さっさとカードを貰ってこよう



「どこいくのよ!!」


「カードを貰いにだよ」


「まだ話は終わってないわよ!」



まだ突っかかってくるか


そろそろウザくなってきたな



「はぁ…おい


いい加減にしねぇと処すぞ?」


「うっ……」



ちょっと殺気を出しちまった


これによってローナはシュンとしてわかりやすく落ち込む


このやりとりを見ていたギルドマスターとS級冒険者は猛暑にやられたかと思うくらい凄い汗をかいてる


今日ってそんなに暑いのかね?


まぁいっか


そっからはスムーズだった


受付に行ってギルドカードを受け取ると前みたいに絡まれる事なくギルドの外に出る


何かもう今日は色々ありすぎて疲れたわ


どっかの宿行って早く寝よう


ローナはまだ落ち込んで項垂れているが、大人しく後ろについてくるので、特に会話をしないで宿を探す


なんか空いてそうな宿を見つけ、中に入り受付に行く



「いらっしゃいませ」


「部屋空いてる?」


「はい、一泊銀貨2枚になりますがお連れの方もご一緒のお部屋で宜しいでしょうか?」


「別々」


「別々のお部屋になりますと銀貨4枚となってしまいますが」


「それでいい」


「…かしこまりました


すぐにご用意いたします」



ローナと相部屋なんてするわけねぇだろが


何考えてるんだこのスタッフは


そしてポケットに手を突っ込み、金貨2枚をカウンターに置く


これを見てスタッフは固まる


さっさと鍵を寄越せ



「これで泊まれる分」


「は……はい」



鍵を受け取り、その部屋へ向かう


もう一つの部屋の鍵をローナに放り投げ、部屋に入り、仮面を外してベッドの上で横になった



「色々ありすぎだろ今日」



深いため息をついた後、目を閉じて眠った

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