第12話 冒険者へのお誘い

ようやくギャン泣きしていた神官が落ち着いた


なんかどっと疲れたなぁ


まだ啜り泣きをしているけど


コレを見ると…何だろう 凄い罪悪感がある


そんでもってローナがこっちを睨んでくるんだけど、俺なんかしたっけ?


思い当たる節が無いかをを考えているが全く無い


そしたらローナの口が開いた



「…師匠」


「何だ?」


「レティって誰ですか?」



うーん何で説明した方が良いのだろうか



「……古い友人」



こう言っときゃ大丈夫か



「そう…ですか」



…何で今ホッとしたんだ?



「その人 強いんですか?」



唐突だな


安堵したかと思えば今度は敵意


こいつもこいつでよくわからんな


ただ何故か敵意剥き出しのローナに俺が言える事は



「強いぞ 今のお前じゃまず勝てないだろう」


「何故です?神官が知ってるってことは教会の人間ですよね?


教会に強い人なんているんですか?」


「まぁ、アイツは一応教会では聖女と呼ばれちゃいるが


そこで教会の人間ってだけで最初にイメージするのは大体が回復職だけどアイツは回復職じゃない


完全な近距離戦闘タイプ


世間一般の回復専門の神官とは程遠い


あの神官の反応を見るに、恐らく教会では恐怖の象徴かな


そんな奴が弱いわけないだろ」



なんか納得していない感じだな…もういいや面倒になってきた


それに神官があんなに怯えるということはレティが教会の中でかなり恐れられているということであり、レティは変わらず元気にやっているということだ


はい、コレで話は終わり


それが分かったなら もういい



「おい神官 レティによろしくな」



それだけを伝えてその場から離れようとした


…できなかった



「レティ、レティって その名前思い出したわ


[聖女]レティシア・フローレンのことでしょ?


魔王を倒せなかった勇者の仲間の一人の」



今度はこいつかよ 今日はやけに絡まれるな



「何だ知ってるのか」



レティのフルネームを言ったのは賢者


まさか教会の人間以外でフルネームを言える奴がいるとは思わなかった


大抵の人はレティシアしか知らない


ファーストネームしか知らないとか、それもどうかと思うけど


てか勇者の回復忘れてない?大丈夫?



「そりゃあ 私は勇者のパーティーメンバーよ?


先代勇者の話は誰でも知っているわよ


特に魔王を倒すどころか手下にすら勝てなかった最初の勇者の仲間の事はね」


「? ……あぁそうか


そういう風に伝わってるんだっけ?


そっかそっか アイツも大変だな」


「何それどういうこと?」


「何でもないよ 何でもない


そんな事より勇者を回復させなくて大丈夫か?


顔が真っ青になっていってるけど」


「え?…あっ!!」



…もうコイツらと話すの疲れた


こんなバカ共放っておこう


それにここに用はもう無い



「行こうか」


「はい」



人がこれ以上集まってくる前にこの場を離れ、S級冒険者の横を通り過ぎた時、俺は歩みを止めた



「おい 屈強な男 お前誰に殺気向けてんだよ」



こいつ俺に殺気を向けてきやがった


俺がそう言ったら、屈強な男の仲間達は「お前何やってんの?」と言った感じの視線を屈強な男に向けている


ローナは「勇気あるなぁ」といった感じで屈強な男を見ていた


てっきり冒険者ギルドの時と同じように蹴り飛ばすのかと思ったけど



「いや…ローナ・エクシムの戦ってる姿を見てその師匠がどんなものか少し気になっただけだ」


「すみません すみません コイツ馬鹿なんです 本当にすみません」



俺に殺気を向けてきた男の仲間たちが必死に頭を下げてくるのを見ると、コイツらは苦労してそうだな



「だって気になるだろう?


魔法は天才だけどその他は凡人と言われてたローナ・エクシムがあそこまで強くなっていたんだぞ?


その師匠がどんなものか気にならない方がおかしい」


「……凡人だってよ」


「言わないでください」


「その他が凡人なのに何でローナをスカウトしにきたんだよ」


「ローナ・エクシムがギルドの中で1番の魔術師だと思ったらだ


新人とは思えないほどの天才ぶりだって噂で聞いていたからな


だからスカウトをしにきたが、それよりもローナ・エクシムの師であるお前の方が今は気になっている」


「何だ俺と戦いたいのか?」


「…やめておく


真の強者というものは見た目じゃわからない


ローナ・エクシムかいい例だ


まさか勇者に勝つ程強いとは思わなかった」


「ローナさんどうやら君は弱いとおもわれていたみたいですよ」


「違うそういう意味じゃない」


見たところお前冒険者じゃないだろう?


ローナ・エクシムが登録をしているなら、その師であるお前も冒険者になる気はないか?」



何で?何故そうなる?


殺気を向けておいて今度は冒険者にならないかだって?


どうやったら今の流れでそうなるんだ



「悪いけど 興味ない」


「いや師匠、登録をしておいた方が何かと便利ですよ」


「ん?」


「登録をしておけばギルドからカードが支給されます


それがあれば、入国する際にも面倒な手続きなどはありません


それに冒険者になれば外で狩った魔物を持っていけばお金に変えられるので、生活には困りません


危険度の高い魔物を狩れば一匹でも相当な金額が貰えますから


メリットは十分にありますよ」


「メリットがあるならデメリットも当然あるだろ」


「それは…ランクに応じて無茶な依頼を受けることがあ流ということだけだと思います


仮に失敗して命を失っても自己責任ですが、師匠なら大丈夫でしょう」



何が大丈夫なのだろうか


危険度の高い魔物を問題なく狩ることができるということだろうか


それはまぁ 問題ない


魔物を倒して金が貰えるのは


別に金に困ってないしそもそも買うようなものがない


でも入国する時のあの面倒な奴は無くなるのか


それはいいな



「うーん 冒険者ねぇ」



登録するだけしておいた方がいいのか?


でもなぁ…まぁいいか



「登録した方がいいと思う?」


「私はお勧めしますよ?


依頼をこなしていけばランクが上がりますし


ランクが高ければ高いほどモテ…


周りから尊敬されますし、優越感に浸れます」


「美女は間に合ってるんだよな…」


「びっ…」



それは別にどうでもいいんだよな


英雄になりたいとかそういったことに興味はない


登録すれば冒険者ギルドのカードが身分証明となり、入国時の手続きなどが省略される


この国に入国する時、ローナがいなければマジで面倒なことになっていただろう


そう考えれば登録をしておいた方が良いと思ったりもする


そんなことよりも何でお前は顔を真っ赤にしているんだ?



「登録してみようかな」


「それならギルドに行きましょう


そして最初に試験を受けましょうか」



え?試験あるの?


聞いてない聞いてない

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