第9話 不快、不愉快、うざったい
「検問や冒険者ギルドで仮面をつけていて正解でしたね」
「?」
外に出るとローナが訳のわからん事を言い出した
仮面を最初につけた時引いていたくせに
今になって正解とはどういうこと?
「何が正解なんだ?」
「別に…何でもありません」
訳がわからん 本当に
「(お姉ちゃんのあの顔…明らかに)はぁ…」
何だこいつ
何人の顔見てため息なんかついて
腹立つなぁ
ローナにイラッとしながら仮面を付け直す
「ん? ……師匠」
「何だ?」
ローナの視線の先にあるのは一個の集団
それは真っ直ぐこっちへ歩いてきていた
「あれがどうした?」
「あれは勇者とそのパーティーですね」
そしてこっちに向かってきているのがもう一組
反対方向から来ていた
「あっちは何だ?」
「アレはS級ですね」
「S級って何?」
「冒険者の最高クラス
A級の上のランクの冒険者です」
屈強な男を中心に後ろにいるのは
賢者、回復役、盾役、斥候
そして勇者
賢者、狩人、斥候、神官
S級はバランスの取れたパーティーでいいね
ワイバーンぐらい難なく倒せる組み合わせだ
勇者は…うん
そして勇者がローナの目の前で止まると
「はじめまして
貴方がローナ・エクシムさんでいいのかな?」
誰?
「そうですけど 何か?」
ふーん お前だったの
ローナ・エクシムっていうのね、知らなかったよ
「僕は[勇者]アイト
キミをスカウトしに来た」
「え?」
勇者がローナをスカウトね
何で?コイツ低ランクの冒険者だろ?
コイツが強くなったのは最近の事だ
それまでは弱かった筈だけど
それとも冒険者になる前から結構知名度があったのか?
勇者がローナをスカウトしていると、反対側にはS級冒険者がいる
何か挟まれたし面倒な予感がする
ローナを放っておいてここから退散…できなかった
服を掴んで離さない
「どこいくんですか?逃しませんよ」と目で物を言っている
離しなさい
勇者がスカウトしていると反対側にいるS級冒険者が口を挟む
「待って欲しい[勇者]アイト
彼女の事は俺らが先に目をつけてたんだ
勇者と言えど順序は守って欲しい」
S級がスカウトするってことは知名度あったのか
へぇー
大人気じゃないか よかったな
「いや こっちが優先だよS級
だって神託が出ているんだから
そうだよね? サナ」
「はい」
すると勇者の後ろに控えていた神官が前に出る
いかにも教会に選ばれた聖女って感じがするね
まぁ勇者一行だしいるか
「我が神から、此処アムル王国にてローナ・エクシムを仲間にしなさいと神託を受けました」
「僕たちは神からの使命で此処に来ているんだ
S級の皆様にはご遠慮いただきたい
改めてローナ・エクシムさん
僕と一緒に世界を救って欲しい」
だから何?って話だ
神の存在は兎も角、神の言葉を信じるのは当然って言うわけでもない
神託が出たからと言ってそれが全て正しいとは限らない
とは言っても神託って言葉が出た瞬間、S級冒険者はたじろいだ
だが神は絶対的な存在っていうのがこの世界では浸透しているみたいだ
その考えは古いと思うんだけどなぁ
勇者がなんかキメ顔をしているし、何でもいいか
決めるのはローナだし
「有り難い申し入れですがお断りします」
「キミに拒否権はないよ
キミを仲間にする事が神の意思なのだから
それとも何か理由があって僕の誘いを断っているのかな?
キミの横にいる彼がキミの判断を邪魔しているとかね」
「ん?」
急に矛先が俺に向いたぞ
勘弁してくれ面倒な事は嫌いなんだ
何か視線が集まるし
俺なんか見たって面白くないだろ
勇者とその一行に至っては殺気なんて向けてきやがる
面倒だなぁ
「それなら僕が彼を倒してその呪縛から解放してあげよう」
そう言うと勇者は俺に剣を向けてくる
剣をオーラが纏っている……聖剣か
本気で勘違いをしているみたいだった
「何か勘違いしてるみたいだけど
俺なんかに敵意を向けても無駄だと思うぞ」
「それは勇者である僕がキミに負けると?
大した自信だね」
「そう言う事を言ってるんじゃないんだけどな」
勇者、その後ろの仲間たちまでもが俺に向かって武器を構える
また戦闘か
俺はただ、どっかの田舎でのんびり暮らしたいと思ってるだけなんだけどなぁ
やれやれ しょうがない
……まてよ
「ローナ」
「はい」
「お前がやれ
修行の成果を見るのに丁度いい」
「ですが」
「今のお前なら大丈夫だ
何も問題ない」
「……わかりました」
「武器は使うな、素手でやれ」
ローナの目つきが変わった
俺の服を掴んでいた手を離し、前へ出ると勇者の前で止まる
てかまだ掴んでたのかよ
「これは僕と一緒に来てくれるということかな」
「違いますよ」
「え?」
「実は私、自分自身よりも弱い者から指図される事が嫌いなんです
そもそも何故、私よりも弱い貴方の仲間にならないといけないの?
不快 不愉快 うざったい
私を仲間にしたいのなら力で証明しなさい
後ろのお仲間も同時に相手をしてあげるから」
ちょっと口調が変わった?
いや、元に戻っただけか
そもそも何で敬語だったんだ?
最初はそんなんじゃなかったけどな
まぁいいや
ローナが勇者の誘いを断った後の暴言と煽りで勇者一行は罵詈雑言
そういえば勇者の仲間って女が多いな
ハーレムパーティかよ
うらやま…しくない
そして勇者は顔を真っ赤にしながら叫びまくる
情緒不安定かよ
さてとあっちもやる気になったみたいだし、ただ見てるのもな
あっそうだ
「そこの屈強な男
お前S級冒険者…だっけ?
ギルドでローナの実力がどの階級にいるのか見てくれないか?」
「何?」
「俺はいまいちギルドの階級の基準がわからん
S級のあんた達に見てもらった方がいいだろ?」
「…わかった」
じゃあ頑張ってくれローナ
先ずは勇者が動く
〈身体強化〉、〈魔力上昇〉、〈自動回復〉〈初動加速〉
仲間からの支援で強化していく
ローナは強化していく勇者を真っ直ぐ見据え、構えると、勇者が聖剣を構える
(右から一閃)
溜めを作りながら勇者が動いた瞬間、目の前から勇者は消えた
だが勇者が右から振るった聖剣をローナは素手で受ける
「……は?」
勇者の目で追えない攻撃をローナが素手で受けたことに勇者は勿論、S級冒険者達も驚愕する
「くぅ〜…やっぱり素手は痛いです」
そりゃ聖剣だからな
【ローナvs勇者】 開戦
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