第7話 甘い紅茶

誰?



ローナの視線の先


振り向けばそこには清楚系のお姉さんがいたが、何この綺麗なお姉さん…とはならなかった



(…十字架の首飾り)



首にかけているネックレスに目がいってしまい彼女の顔はあまり見ていない



「…知り合い?」


「はい

家が近所で小さい頃からよく遊んでもらってた

お姉さんです」


「ふーん」


「ローナどうしたのこんなところでしゃがみ込んで

それにその髪」


「……色々あって」


「色々?」


「取り敢えず別の場所で話をしよ?

ここじゃ話せないこともあるから」


「そうね

ちょうどいい場所があるわ

ついてきて」



何か邪魔しちゃ悪い感じかな?


感動の再会って訳でもなさそうだけど、ローナは死にかけんだ


二人きりで話がしたいだろう



「俺はどっかで時間潰してるわ」


「え?どうしてです?」


「その方がいいだろ?」


「いいえ? 一緒にいて下さい」



…すぐ赤面する奴が何でこういうことは真顔で言えるんだ?



「あの…よかったら是非いらしてください」



お姉さんもこう言うのでついていったら、何か凄い豪華な店に連れて来られた


こんなとこに入って大丈夫か?


金持ってないけど?


そんな心配を他所に流れるがままに中に入ったら気づいたら席に座っていた


そして目の前にお茶が出されると話は始まった



「そんな事が」


「うん」



ローナが事の経緯を話し、その間俺は出された紅茶を飲む



(…甘)



横で聞いているけどローナは幾つか隠しながら話していた


ビービー泣き喚いて子供のように駄々をこねていたこととか



「フッ」



ちょっと笑いを堪え切らなかった


ローナはそれに気づきお姉さんから死角になっているところで足を蹴られた


こいつ…


気づかれないよう紅茶の糖分を魔法で取り除きそれをローナの紅茶の中に入れ、ティーカップをテーブルに置く



「だからカリオにもし会った時

視界に入った瞬間ぶっ殺す

って伝えておいて」


「わかったわ」


「それで? この人は何?」



視線を俺に向けるお姉さん

それにローナは



「私を助けてくれた人

そして私を鍛えてくれた人」


「そう…」



そんなに見つめるんじゃないよ

照れるだろうが



「ローナを救っていただきありがとうございます」


「礼を言われるようなことはしてないよ」



ローナを助けたのは単なる気まぐれ

本当は見て見ぬ振りをしようとしてた

礼を言われるような褒められるようなことはしていない



「いえ ローナを助けていただいた

それだけでも感謝しきれませんよ


本来ならローナは命を落としていた状況で、こうしてローナが生きていることだけでも奇跡


あなたに救っていただくことが神の御意志なのでしょう」



神ね

奴らが好きそうな言葉だ



「そうかい それならよかった」



テーブルに置いたティーカップに手を伸ばし、残りの紅茶を飲み干す




(仮面をつけた状態でどうやって飲んでるんだろう)



そしてティーカップをテーブルへ置こうとした時



パキンッ



「おい 今斬りやがったな」

「?」



カップの取っ手が折れ、本体がテーブルに落ちて割れた。


ローナはエルが何を言っているのか理解できない


そして数秒間沈黙が続くとエルの口角が上がり



「頭の中で俺を殺せたか?」



エルの発した言葉は今のローナに理解できるはずはなかった。

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