ブルガダ日記

京橋西口

第1話 忘れられない夜

2007年10月13日(土)


この日も普通に仕事を終え帰宅すると夕食前に電話が鳴った。バンドのセッションの誘いだった。食事を終え車で高速道路を使いライブハウスに向かった。車には嫁とメンバーを1人を乗せていた。

高速道路を降りてすぐの対向車線に目的地があるため、信号が赤の右折ゾーンにゆっくり向かっている時、突然の目の前が真っ暗になった。

目が覚めたとき嫁にもたれ掛かって抱かれていた。日曜日の朝の布団の中で目覚めた感覚だった。しかし意識ははっきりしてくると恐怖に包まれた。何が起こったか分からなかった。車が中央分離帯に前の右タイヤだけ乗り上げて傾いている。歩道の方には回転寿司店があり、人が集まりこっちを見ている。他の車に衝突されたのか?いや違う。自分の車しかない。後ろに乗っていたメンバーが交通整理をしていて、救急車を呼んだと言っている。他のメンバーもライブハウスから駆けつけて心配そうにしていた。僕は嫁に抱かれたまま震えていた。何が起こったんだ。

間もなく救急車が到着した。自分の体はいつもと変わりもなく歩いているのに、なぜ救急車に寝かされ運ばれてるのか不思議だった。救急車に乗るのはこの時が初めてだった。こんなに乗り心地が悪いのだとは知らなかった。

病院に到着しベッドに寝かされ大人たち囲まれた。怖くて嫁にそばにいて欲しいと何度も呼んだが、ちょっと離れたとこで聞き込みをされてるようだった。

すると心電図を見ていた看護師がな何かを叫んだように見えた瞬間、目の前が真っ暗になり意識を無くした。そしてまた目が覚める。そのときはもう周りの大人が慌ただしく焦っていた。

もう訳が分からなかった。痛くもなければ苦しくもない。なんの前触れもなく突然の意識がなくなる。医者に入院を告げられた。気が動転し嫌だと拒否した。とりあえず一度家に帰りたいと訴えた。

そして3回目の意識消失が起こった。今回は目覚めた時の感覚が違った。胸の辺りがヒリヒリ痛かった。意識が戻らなかったので電気ショックを当てたと聞かされた。「このまま帰ったら死にますよ」と医者に言われた。いつの間にかバンドのメンバーも駆けつけてくれていた。今日の演奏はどうだったんだろうと思いながら、僕は人生初めての入院をすることになった。

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