ヘルメス1
「おいっ!ハーデス生きてっか!?」
「あぁ‥‥‥タナトスが目の前に‥‥‥。」
「それは、仕事サボってきてるからだよ。それか仕事に不満でもあるんじゃねーか?」
「有給とったし‥‥‥。完全週休2日、固定給+出来高払い。これだけ良い所なんて他にはないんじゃないか。」
「…企業の鏡だな。私が大人だったら就職したいぐらいだ。あと今、アポが今治してるから。それは九割九部九厘幻覚だぞ。」
「ふんっ、そんなの分かってる。揶揄だ揶揄。」
「どうだか‥‥‥。貰う力もあんたからは富と眠り、ペルさんからも植物の成長と実りを多くするのに決めたし儀も終わった。迎えが来るまでお前をからかうことにするよ。」
「あら?それは難しいかもしれないわね。」
「伯母上。お待たせして申し訳ございません。お連れするのはこの方でしょうか?」
「ご苦労様。そうよ、この子を連れていってあげてね。」
つば広の丸い旅行帽に金色の羽付きサンダルをつけた青年。間違いない。ヘルメスだ。
「ふーん。なかなか可愛い子ですね。」
前髪を不躾に持ち上げられる。
「ありがとう。」
女扱いにイラっとしたが出来うる限りフラットな声で返す。ヘルメスはさも以外だと言うように見てくる。
「神に対して敬語も使わないのか?それとも使う頭がないか?」
「神=無条件に尊敬され愛される者じゃないと思う。例えオリュンポス12神でも全く崇拝されていない神だっている。貴女だって使っているのはその足だけでは?」
「アルファベットを作り、世界に通用する言語を作り火の起こし方を見つけたトリックスターでもある僕によくそんな口が聞けたな。あの連勝の女神アテナ様だって口では僕に勝てないのだし。」
「それは否定しない。」
「だろう。」
「だって、能弁の神が口論で勝てなかったらいい笑い者になるだけじゃないか。」
「なっ!」
ヘルメスは真っ赤になって黙ってしまった。さすがに哀れになったのかペルさんが助け船を出した。
「はいはい。喧嘩しない。喧嘩しない。」
「喧嘩じゃなくて、言論。」
「分かったわよ‥‥‥。」
ペルさんも疲れているのか行動がなげやりになってきている。
「はぁ‥‥‥。まあ、良いですよデメテル様。とりあえずついてこい。」
なんだかんだ言ってヘルメスが案内してくれるらしい。腕をさりげなく組まれてどんどん歩き始めている。
「ヘルメス。頑張れよ。」
アポとハデスが優しい目で見ている反面、アルはヘルメスに厳しい眼差しを向けペルさんは私に哀憫の視線を投げ掛けた。
「「凰ちゃん/凰縁嬢。」」
「なんだ。」
「頑張って下さいね。」
「私達も微力ながら応援します。」
二人はそれはそれは美しく礼をした。
それを見て私は手を振りほどき四人に対して最敬礼をした。
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