第4話 大宴会

 ここはリラ工房の食堂。そこのテーブルには料理や飲み物が所狭しと並べられている。


 異世界からの来客を歓待するささやかな宴が催されていた。


 会場の隅っこでウインナーをかじりながらウーロン茶をすすっているのはララだった。


 メイド服を着てララの傍に控えているのは暗殺用自動人形のソフィアだ。ソフィアはララの身辺警護と身の回りの世話をしている。


「ララ様。まだお召し上がりになりますか?」

「もうよい。明日は早い。寝るぞ」

「かしこまりました」


 さっと席を立つララ。


「御馳走になりました。私はここで退席させていただきます」


 ソフィアと共に一礼して踵を返し、さっさと退出してしまった。


 それを追おうとしたのは黒子。

 しかし、完全にタイミングを逃していた。


「もう残念。ララちゃんと仲良くなりたかったのに」

「そうね。金髪ロリっ子も萌えるんだよね。胸がなくても!」


 黒子と一緒に、残念がっているのは羽里だった。黒子と羽里はターゲットをフィーレに変更した。ララよりは少し成長しているものの、まだまだ幼く十分にあどけなさを残しているフィーレ。二人は彼女の両側へと座った。そしてフィーレの手を取り頬ずりをしている。


「えへえへ。フィーレちゃん可愛い」

「肌も綺麗。すべすべですう♡」


 二人にデレられて戸惑うフィーレ。


「あのう……わたくしはそのような趣味はございませんの」


 過剰な接触を断ろうとするフィーレだが、そこは羽里に押し通された。


「大丈夫大丈夫。私たちはレズじゃないから。美少女を愛でているだけなの。でへでへ」

「そうそう。フィーレちゃん可愛い」


 羽里と星子ににじり寄られ、フィーレは頬を赤く染めている。褒められ好意を受けていることに対して拒否しきれないようだった。


 一方、知子はシュランメルトへと酒を注いでいた。

 

「お兄さん。未成年っぽいけど大丈夫かな?」

おれは記憶をなくしているのだ。年齢すらわからない。しかし、このワインという飲み物はなかなか美味いな」


 一杯、二杯とワインをあおるシュランメント。

 その顔色はいささかも変化せず、酒豪の貫禄を垣間見せていた。


「へへへ。私も未成年なんだけど、ここは異世界だからいいよね」


 などと言いつつ、知子は自らのグラスにスパークリングワインを注いで一気に飲み干した。


「ぷはー! これは良いね!! きっと高級品だよ」

おれにワインの知識はないが、これは旨いと思う。うむ。旨いぞ」


 再び一気に杯をあおるシュランメント。その飲みっぷりを見てリラは彼の横へと陣取った。


「貴方、私にも注いでくださるかしら。ワインは沢山ご用意しておりますよ。ワインだけではなく日本の焼酎も沢山。ほら、ここにあるのは黒霧島の25度」


 リラはドカンと一升瓶をテーブルの上に置く。彼女の眼は爛々と輝き、今宵の獲物を見据えたかのようだ。


「お、黒霧じゃん。レモンソーダ割りできるかな。レモン酎ハイにしたい」

おれもそれを飲んでみたい。頼めるか?」

「いいわよ。お姉さんがグッとくる奴をこしらえてあげる」


 リラは笑顔で酎ハイを二つこしらえた。

 それを知子とシュランメルトに差し出す。そして自分は湯割りにして中に梅干しを一つ放り込む。


 その様子を眺めていたシュランメルトはレモン酎ハイを一気に飲み干し、空いたグラスをリラに差し出した。


「そのシンプルな湯割りを作ってくれないか」

「ふふふ。これは上級者向けの飲み物よ。初心者には厳しいかもしれないわ」

「かまわん。自分の限界に挑戦するのもまた一興だ」


 そしてその湯割りをも一気に飲み干すシュランメルトだった。知子は笑いながらレモン酎ハイを飲んでいる。


 その場に一人取り残された人物がいた。

 それは最年少のグスタフだった。


 グスタフは何を思ったか、リラの見よう見まねでレモン酎ハイを三つ作ってフィーレと羽里、黒子に差し出す。


「レモンジュースです。ししょうのおすすめ。美味しいですよ」


 酎ハイをジュースと偽って少女に飲ませようとする少年。

 グスタフは何を考えてるんだ?

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