第37話 作戦会議。
城内に案内されて話した内容は、魔力測定会の夜、つまり俺の襲撃からのセシリアの状況。
それと、それに関わった人たちの話。
当時の動きを知りたかったみたいなんだよねぇ。
(俺にしたら懺悔の場みたいなものなんだけどさ~)
という事で、俺から話したことは、まず公爵家内部の人間に手引きをしてもらっての侵入…つまり協力者がいた、ということなんだよねぇ。
しかも古株で、昔から仕えているような人間の中に、少なくない人数の協力者がいた。
俺が知ってるだけの名前はあげておいたけど、その中には全く疑われずに強い信頼を得ているものも数人、いたようだ。
「元々、狙ってたのはセシリア嬢だけではなかったので、彼女の上の姉妹たちも狙ってましたから、昔から潜入してました」
ただ、この情報に対しての王家側の反応は、ショックというよりは「やっぱりね」という感じに見えた。
「……
──攫った。
まぁ、攫ったのは俺じゃないけどね。
今回と違って、教会にいることは伏せずに、遊びにきているという風を装っていたが…まぁ実際は攫ったという表現で、間違いない。
なにせ、彼女たちの魔力測定会の会場からの、連れ去りだったから。
「そうよね、幸か不幸かあの子達には、光の属性がなかったのだけれど…ね」
ちなみにセシリアの一番身近な人物として、専属メイドが浮かぶだろうけど~、彼女は協力者ではない。
……酷く抵抗されたので、シーツで蓑巻きにしちゃったんだよなぁ。
「ごめんなさい」の意も込めて、彼女は協力者ではないことを強調しておいた。
「大丈夫よ、彼女もメイドとしてではあるけれど、他家からお預かりしている大切な娘さんなのよ。彼女が頑張ってセシリアを守ろうとしてくれたのもありがたい事だけれど、それでも大怪我をせずにいてくれてホッとしてるところよ。あなたも、彼女に危害を加えずにいてくれてありがとうね」
と、今にもまた泣き出しそうな顔で、にこり。
さっきの大号泣の余韻なのか、すでに瞳が涙で潤んでいて、少し焦る。
襲撃者に感謝とか…なんとも言えない構図になってしまっているけど、まだ攫われた我が子の行方がはっきりしていないという緊急時なのに、自分の子以外にも心配をできるのは、さすが大聖女といったところなのかな?
ちなみに大聖女の迎え入れというのは…教会の最上位の女性には「聖女」と名がつく。
彼女が当時の国王から賜った称号には、さらにその上に存在するかのような「大聖女」
ならば、教会所属なのが当たり前である!という教会の一方的な主張ね~。
まぁ「大聖女」という称号の由来は、信仰心からではなくて、その光の力からのはずだから、全く方向違いの主張ではあるのだけどねぇ。
ただし、その「大聖女」は王の娘。つまり王族どころか、上位の王位継承権までしっかりあるお姫様。
それでも「大聖女」なのだからと、教会所属を強硬に主張したんだけど…。
この国の法では、王の直系者であるのは勿論のこと、年長者から順により優秀だと思われるものが王として認められる事になっているから、いくら他に兄弟がいても次の跡取りが確定するまでは、継承権を放棄する事は認められないんだ~。
なので、王位継承権を有したままでの教会入りは絶対に認められずで、揉めに揉めて今に至る。
教会としては、王位継承権を有した今までの移籍がベストだったみたいだけどね。王家のとの結びつきが強くなるのも狙いだったからねぇ。
ただ、ここの王族はとにかく血筋に固執していて、血族であれば、死ぬまで継承権は消えない。つまり、絶対に大聖女が教会所属になる事はないという事。
少し面白いとおもうのは、この国の場合、姫が後を継いだ場合、女王となる。
結婚しても国王は旦那ではなく、王家の血筋である女王が執る事になる。
とにかく血筋!である。
さて、話を戻して……専属メイドを蓑巻きにした後に、廊下が少し騒がしかったので、異変に気付かれたと思い、セシリアを担いで、部屋の窓から逃げようとしたところで、子息、続いて宰相夫妻がセシリアの部屋へ到着してしまったので、子息の攻撃を奇襲という形の反撃で返して足止めとして、逃走した事を説明した。
(逃走も、もちろん内部の手引きありき、だったんだけど)
そのあとは、暗部が司教と聖女へセシリアを引き渡したのを確認したあと、各自の部屋へ戻ったと思ってた。
「思ってた」ってのは、俺だけ所属が違うので部屋がある場所が違うんだ~。
「あ、そこ違うね。ユージア君と行動にした暗部はみんな、遺体で見つかってる。ただ、大聖女の証言にあった、君と同じ体格の遺体がなかったから、探してたんだけど」
「ほら、ユージア君って大人っていうよりは少し小柄でしょ?それに大聖女の話によると、声も子供のようだったって言ってたし。あの襲撃での君以外の暗部達はしっかり鍛えた体格の大人しかいなかったから」
王家側の
でもその全ての遺体を確認した時に、小柄の遺体…つまり俺がいなかったから、探してたらしい。
「私もそのあとに司教と聖女に呼び出されて、処分されましたが」
「あぁ、それね。君が処分されたのは、セグシュ君を切ってしまったから。魔力を持つものが切りつけると、無意識にでも傷口には魔力の残滓があるんだ。そこから犯人を特定されないために、処分されたんだよ」
にこりと、思案げに…そして侮蔑のこもるような仄暗い笑顔を浮かべる、頭皮がちょっと残念な事になっている宰相。
セシリアの父である宰相は実働系、このちょっと残念な頭皮の宰相が頭脳系なのかな?
あれ、じゃあ、もう1人は何なんだ?
「魔法や魔力持ちの起こした事件に関しては、教会より、騎士団の方がノウハウあるからね。魔術師団の他に、研究機関もあるくらいだし」
「教会の暗部ほど過激思想ではないけどね…」と赤髪の宰相が補足のように話す。
そういえば、セシリアの父親は魔術師団の師団長もしてたんだっけ。
「まぁ、古代の
もう1人の宰相が軽く首をすくめるように笑う。
こちらの宰相は、赤髪の宰相と同じくらいの年齢に見える。
「古代の…って、あれ、アーティファクト!?」
「そそ、アーティファクト。ユージア君、一般的に出回ってる「従属の首輪」なんかよりさらに強力な精神操作も受けてたはずなんだ。しかも長期間でしょ?その状態から、ゼンやセシリアが首輪を破壊したところで、助かるどころか、もしかしたら支配下にあった影響が一気に解かれた反動で、君の精神が壊れて…という事態にもなり得る、本当に危険な状態だったんだよ?」
「助かってよかった」とほっとするような、胸に手を当てて息を吐きながら話された。
……改めて聞いてぞっとする。アーティファクトっていうのは、古代のマジックアイテムで、稀にダンジョンの宝箱から見つかったりする、超高性能なマジックアイテムなんだ。
まぁ、装着中にしっかりと黒歴史は作られまくっていたから、突然思い出して発狂しそうにはなるけどね~。
その程度で済んだのだから、よしとしよう。……ってなると思う?
やっぱり、しっかりと償って貰わないとな~。
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