第3話 映画館のポップコーン(前編)

 映画館のロビーでは色々な映画の予告映像が流れていました。


 ちょうど好きな漫画が実写化していて、その予告も流れています。


 すっごく気になる。


 漫画の実写化って、できばえがイマイチの時もあるんですが。


 でも、その映画はキャストもかなり豪華で、けっこう期待しています。


 ただ、今日はその映画を見るわけにはいきません。


 今日見る映画はもう決まっています。


 それは今、私と手をつないでいる、K太くんの見たがっている子ども向けの映画です。


 K太くんは小学校三年生です。


 K太くんのお母さんが急なお仕事で、映画に行けなくなったそうなのです。


だから、今日の私はそのピンチヒッターです。


 お母さんと一緒に行けなくて、K太くんは元気がないんじゃないかな、と心配していたのですが、なんかめっちゃ元気です。


 めっちゃ笑顔。


 つないでいる手を、ぶんぶん、ふってきます。


 なんでそんなにご機嫌なのか理由を聞いてみると、私と久しぶりにお出かけができて、嬉しいそうです。


 めっちゃいい子です。


 ううう。


 良心が痛みます。


 実はK太くんのお母さんから、お金をもらっているのです。


 二人分の映画代だけでなくて、K太くんを連れていってくれる感謝料として、いくらかお金をもらってしまっているのです。


 K太くんは私と一緒にお出かけするのを、こんなに楽しみにしてくれていたのに。


 私はお金のためにK太くんとお出かけしているみたいで。


 心がすごく痛みます。

 

 ち、違うんですよ。


 私だって、K太くんと、お出かけするのすごく楽しみで。


 そうやって私が悩んでいると、K太くんが私のことを心配してくれます。


「どうしたの、お腹痛いの」と聞いてくれます。


 お腹は痛くないんだよー。


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