飼育

人の飼い方入門

ペットショップで人を買ってきた、

安かったからツガイで二匹。

飼育には年月を費やすことと、

飼い方次第では暴力的になるらしいが、

以前にも飼っていたオスの人で慣れている。

もっとも、

人の性質で特有な自決の場所を探し、看取られる事なく息をひきとるという様な死に方だった。餌は一日三回与えて、バランスよく栄養には配慮している。

トイレは自分で掃除させる、臭くて汚いから。一番厄介なのが、服を着させる事。

裸という状態で飼うと寿命が短いらしい、まったく面倒な生き物だ。

たまには、首輪へリードをつけて散歩させるが寄り道ばかりする。抱き抱えると泣き喚きその場で駄々をこねる。宥めようと欲しいものを与えると歩き出すが、家へ帰るまで何度買い物をすることになるかわからない。

ある季節になると夜中に家を抜け出す癖がある、外で繁殖してきて子どもを何人も連れてきた時には驚いた。同じ人を飼っている者が、苦情に来たことがあった。近所中、こんな人ばかりだから、うちのかどうかわかりませんよ？と追い返した。

飼い慣れて、言う事を聞く様になれば使用人として家事をさせる。時間があればアルバイトを探させ外で働いてもらう。ぼくらの世界より賃金は安くて雀の涙ほどしか無いが、家の中でその分を補ってもらう。

やがて病気や怪我で死んでゆく人も居るが、だいたいの寿命は八十年くらい、ぼくたちの四分の一だな。

この時は、同じ生き物の情けとして葬儀と埋葬してあげるが合同墓地だ。周忌には必ず線香をあげに行く。

今日買ってきた人二匹も、そんなつまらない生涯なのかな？と飲み水の器へミネラルウォーターを入れている。

さて、今週中に出来なかった仕事を家に持ち込んでいるから折角のお休みだけど、

これから仕事だ！

お前ら人は、大人しくしてろよ？

何、餌が無いだと？

んー、じゃあこれで外で食って来い。

お釣りとレシートは忘れるなよ？

あ、待った！

やっぱり細かいお金にしよう。

以前飼っていた人は、誤魔化してパチンコへ行かれたからな。うちも裕福な家庭じゃないんだ、言う事を聞かないと刑務所という檻へ入れて殺処分するぞ！わかったか？

よし。はい、行ってらっしゃい。

ふー、この仕事を明日までに片付けないとな、来週早々に奥さんが産婦猫科病院から帰ってくる、ベビーベッドと哺乳瓶は数通りあるから、あとの買い出しは、おしゃぶりとマタタビが要るかな？！