第4話
私から見て『
ただ小学生になる前からお互い面識を持っていて当時、私の周辺に同い年くらいの子供もいなかった事もあり、会うたびに遊んでいた。
でも、私と遊ぶ事は多くても、緑が私以外の人と遊んでいる姿は……実はあまり見た事がない。
それは、緑が『普通の人には見えないモノが見えてしまう』という事を周囲に隠していた事もあったから……という事と、本人が引っ込み思案なところがあったからだろう。
でもまぁ、緑が周りからどう見られていたという事に関して実は、私が本人以上に知っている訳で……。
なんだかんだ今日までクラスは違っても一緒にいる事が多かった。
そして、世間的にはそんな『幼なじみ』とも呼べる関係でも、未だによく分からない……という行動を緑はたまに起こしたり、言ったりしてくる事がある。
例えば、今日学校に来たばかりの私に対し、開口一番。
『今日の帰り、季節外れの肝だめしに行こう』
なんて突然言ってくる辺り、本当に意味が分からない。
「はぁ……」
『どうしたの? アンニュイなため息をついて』
「数馬『アンニュイ』の意味も知らずに使っているでしょ」
『えー、ちゃんと分かって使っているよー』
「どうだか……って、言うか」
『ん?』
「なんで
『えっ、あー。ちょっと野暮用があって』
そう言って数馬はあからさまに私から視線をそらした。
「どんな野暮用よ。でもまぁ……どうせ知っていたんでしょ?」
『なっ、何が?』
「緑が言っていた『肝試し』の話よ」
『あっ……ははは、やっぱりバレてた?』
「まぁどうせ、この間いなかった時に緑と何かあってそういう話のなったんでしょ」
『あはは』
さらにそう聞くと、数馬は力なく笑った。
「はぁ」
しかし、緑がこういう突拍子もない話をしてくる時は大抵が『幽霊など』が絡んでいる事が多い。
私も最初の頃は、緑の言う事に対しいつも『半信半疑』だった。
でも、緑に突然誘われて行った何もないはず『蔵』の底に『小判』があったり、それこそ『肝試し』と言われていった空き家の中で隠されていたお宝を見つけたり……そういった事に出くわすたび、私は緑の言う事は本当だと認識を改めてた。
ただあの頃と決定的に違うのは、私も『それらが見える』という点である。
あの頃は、見えている緑にただただついていくくらいしか出来なかったが、今回は違う。私も『見える』という事は少しくらいなら緑の力になれるはずだ。
『でも、昴』
「何?」
『あんまり張り切り過ぎてこの間みたいな事はしないでよ?』
「うっ……」
あれは失敗だった……と、私は今でも反省している。
私と数馬が探してる『御札』は『さまよえる幽霊たちに関する事』を解決すると手に入る。
そして、前回。緑と共に私は『黒い犬』を探しにとある公園を訪れた。
私は一人の『少年』に出会い、声をかけ、その少年が優しく「案内してあげるよ」と言ってくれた。
そう……そこまではよかったのだ。
しかし、私が「じゃあ、友達を呼んでくるね」と言った瞬間。少年の雰囲気がガラリと変わり、私はその少年の雰囲気にのまれてしまった。
仕方なく私は少年に引っ張られるがままついて行ったのだが、少年は突然公園前の道路で私を……思いっきり突き飛ばし、倒れ込んでしまい、そこに車が突っ込んできたのだ。
運よく車のブレーキが間に合い、私は擦り傷程度で済んだ。
でも、緑や数馬だけでなく、その公園の情報を緑に話した勝幸伯父さんにまで迷惑をかけてしまった。
「…………」
せめて、緑が来るまで会話で誤魔化すなりすればよかった。そうすれば、みんなに迷惑をかけずに済んだのに……。
『まぁ、今回は多分。緑さんがそばを離れないと思うけど……』
「え……?」
かなり小さい頃……それこそ私と会う前から『見えていた』はずなのに、私のそばにいないといけないほどの事があっただろうか?
『うーん……。どうやら上手く伝わっていないようだね』
「何がよ」
いくら考えても「緑が私のそばを離れないだろう」と言った数馬の言葉の意味が分からない。
『……なんか、緑さんが
「どういう意味よ」
そう聞き返したが、数馬は「言葉のままの意味だよ」としか言わず、詳しい事は教えてくれなかった――。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「……どうした、昴」
「うぇ? えっ、何? どうしたって?」
「いっ、いや特に意味はない。けど、なんか……落ち着きがないというか」
「えっ、そっ……そうかな、あははは」
なんて、口ではそう言ってはいるモノ……緑の言う通り、私はあまり落ち着いてなんていなかった。
別に「緑にいいところを見せよう!」とか、そんな風に意気込んでいる訳じゃない。
ただ……なんというか、この今歩いているこの整備されていない『道』がなんとなく、落ち着かないのだ。
『…………』
そして、数馬もなぜか無言のまま私の隣を歩いている。
しかし、その表情は考え事をしている……という感じより、この歩いている道をしっかり踏みしめて、この地面から何かを感じ取っている……という感じだ。
「それで、緑。なんで急に『肝試し』なんて言い出したの?」
「ん? ああ、実は
「え? ううん、何も?」
「……なんで話していないんだ? 数馬」
私がキョトンとした表情で答えると、緑は数馬の方をジーッと見つめている。
『えっ、あっ……えーっと、タイミングが……なくて』
――嘘である。
話をするタイミングなんていくらでもあった。それこそ、今日誘われた時点で話せばよかったし、そうじゃなくても
その時にしても良かったはずだ。
「はぁ……。まぁ、いいよ。こんなところで言い争っていてもしょうがないし、歩きながら説明するから」
緑は呆れながらも、私の少し先を歩いた。しかし、私に気を遣ってくれているのか、スピードは私に合わせてくれている。
そんな時、ふと数馬に言われた言葉が頭をよぎった。
『まぁ、今回は多分。緑さんがそばを離れないと思うけど……』
「………!!」
「どっ、どうした。昴」
「うっ、ううん! なんでもない!」
そう言って両手を左右に振ると、私はそのまま下を向き、無言になった。そして、その視線が向いた先にいる数馬は……なぜか笑いをこらえている。
「……」
『いっ!!』
私はその言葉が浮かんだ理由も分からない事と、笑いをこらえている数馬の表情の両方に無性にイラついた私は思わず、よろけたふりをして数馬の足を思いっきり……踏んだ。
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