第2話


「さて、どうしたモノか……」


 焼きそばは食べ終わったけど、お腹にはまだ随分と余裕があるし、時間もある。


 このまま他の出店を見て回ってもいいし、他にも射的とか金魚すくい……食べ物系じゃなくても色々遊べる出店もある。


「……」


 でも『金魚すくい』だけは止めておこう。いつもすくい過ぎて出店の人に怒られてしまう。


「ふぅ……」


 ふと辺りを見渡しても、まだまだ夏祭りは賑わいを見せている。


「…………」


 活気づいている……とはまさしくこの事だろう。


「まぁ、こういった雰囲気が嫌いな訳じゃないけど……」


 なんて呟きながらふと目をやると……。


「……」


 そこには提灯などの灯りはなく、他の場所と比べると……暗い場所がる。


 ただ、確かあそこは……歩いていけばこの夏まつりの会場である神社の敷地内にある『大きな池』に着くはずだ。


「……」


 この神社は「近所だから……」という事もあってよく来るが、あの池に来ることはあまりない。そもそも『この池』の周辺自体、普段は立ち入り禁止になっているはずだ。


「??」


 しかし、今日はそれがない。それによくニュースで見るような『お披露目』なんて事もしていなかった。


 そもそもそういった『お披露目』は『普段見せる周囲の人に見せること』や『それまで知られていなかったり、見られたことがなかったりしたものを、広く一般に公開すること』を指す。


 だから、そういう場合は大体『大々的』にするはずだ。それにお披露目をするにしても、こんな灯りも何もない暗く殺風景なはずは……ないだろう。


「……」


 気になったそこで私はその『池』に行ってみることにした――。


◆  ◆  ◆  ◆  ◆


「はぁ……」


 そんな『感嘆』な声が思わず出てしまうほど、その大きな池にはキレイな満月が浮かんでいる。


 ――とても幻想的な景色だ。


「……さて」


 その幻想的な景色を堪能し、もうすぐ屋台が多く立ち並ぶ大通り着く……というところで……。


「キャー! ひったくりよー!」


 突然、女性の悲鳴が聞こえてきた。


「ん?」

「おらー! どけどけー! 邪魔すんじゃねぇ!」


 私の目に突然飛び込んできたのは黒い塊……にしか見えない。ただ『その黒い塊』はものすごい勢いでこちらに向かっている。


「え、え……」


 しかし、この時の私の耳には……。


『やっーと……見つけたー』


 凶暴な『ひったくりの声』ではなく……可愛らしい『少年の声』だった。


「え……? 何、今の……声?」


 明らかに『ひったくり犯』の声じゃない。さっき言った「どけーっ!」という声に可愛さなんて皆無だ。


 そのせいで私はその場で固まってしまい……。


「そこのヤツどけー!」

「え……」


 混乱しているうちに、私は『黒づくめ』の『ひったくり犯』がすごい勢いで……まるでタックルするかの様に突っ込んで来ていた。


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