第2話「風聞」

「ルミカさん、いなくなっちゃったんですって?」

「お母様は半狂乱ですってよ、おうちで事件が重なって」

「ルミカさんは叔母様が倒れているところへ、学校から帰って——」

「制服のまま姿を消したみたい。鞄が放り出されてて……」

「だからね、まだそこら辺にいた殺人犯に拉致されたんだろうって話」

「いやぁ、怖い!」

「……そのことなんだけど。ルミカさんソックリの子を見たわ、昨夜」

「ええ?」

「お姉ちゃまの十六歳の誕生祝いにね、家族で食事に行ったの」

「前に話してたフレンチのお店?」

「ええ。多分ルミカさんだろうって子が、男の人と一緒に……」

「どんなどんな?」

「うーん……。三十歳くらいかしらん」

「オジサンかぁ」

「三十はまだオジサンじゃないわよ!」

「それでそれで?」

「曰く言いがたいハンサムね。綺麗な顔だけど、どこか邪悪な雰囲気で」

「じゃあ、そいつが犯人!」

「ルミカさんの様子は?」

「ワインなんか飲みながら、うっとりした表情で、目を潤ませて——」

「えっ、制服のまま?」

「いいえ。とっても高そうなワンピースをお召しだったわ」

「それ、誘拐じゃないんじゃない……?」

「そうね。楽しそうに、二人の時間を満喫してるって感じだった」

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