シモーヌ編 役に立てる方法

「間違いありません。メイトギアです。おそらく<鈴夏すずか六型亜式>だと思われます」


ドーベルマンMPM六十三号機が捉えた映像を画像解析し、セシリアに見てもらうと、彼女はそう告げた。イレーネも、


「私もそう思います」


と告げて、さらにメイフェアも、


「はい、間違いないと思います」


タブレットを通じてそう口にする。


こうして、セシリア、メイフェア、イレーネ、アリアンに続いて五体目のメイトギアが発見されることに。


さすがにメイフェアやイレーネが発見された時の驚きというよりは『嬉しさ』の方が大きかった。コーネリアス号の乗員達を守れなかったことにより自ら壊れることを望んで<当てのない調査>に出た彼女達もできれば見付けて回収してやりたかったしな。


メイフェアやイレーネが発見できたのはそれこそ意図せず遭遇できただけのただの<幸運>だったが、アリアンは母艦ドローンが発見、そしてこの<鈴夏すずか六型亜式>については、その可能性を頭に入れた上での活動が功を奏したわけだから、単なる幸運とは違うと思う。


なので当然のこととして、回収のためにアリアンを派遣する。


しかし、そのための準備として六十三号機らによって助け起こされた鈴夏すずか六型亜式は、アリアンと同じく日光や風雨に曝され続けたことによりさすがにボディの劣化が進んでいて、特に<装甲スキン>は風化したゴムのようにボロボロと崩れて、素地の部分の人工真皮があらわになった。しかもその人工真皮すら劣化が始まっていて、本来は赤っぽいピンク色のはずのそれが色褪せてしまってところどころ穴が開いている。ウイッグも基部が劣化していてバラバラになって落ちた。


本来は、ちょっと日本人形を思わせるたおやかな印象のデザインだったらしいのが、もはや完全に見る影もない。


正直、ボディの方は使い物にならないだろうというのは一見しただけで察せられてしまった。アリアンと同じくメインフレームだけでも起動できれば御の字という感じか。ボディは劣化しても、メインフレームは守られてる可能性は十分にある。


メイフェアの時には思いもよらなかったが、今なら再びロボットとして役に立てる方法ならある。スーパーチヌークのメインフレームとして再生したアリアンと同じように、別の機体に載せ換えてしまえばいいんだ。


そう、ちょうどアリスとドライツェンのろく号機を建造中だ。それのAIとして載せるという方法だってある。


だとすれば放置しておく理由もない。


発見から一時間後、アリアンが現地に到着。高仁こうじんをバケットと共に下ろして、見た目にはもはや<ただの残骸>でしかない鈴夏すずか六型亜式を収容。コーネリアス号へと引き返したのだった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る