シモーヌ編 石炭の調査

新暦〇〇三六年四月十二日




石炭の調査は、正直なところ当面の最重要課題の一つだった。それがあればコークスが用意できる。石炭を蒸し焼きにするためには約千二百度の温度を保てる炉が必要だそうだが、そちらについては、今の時点なら電気炉でも可能だ。さらに大量のコークスを一度に確保するとなると電気が足りなくなるとしても、現状ではそこまで必要ないしな。


コークスが用意できれば製鉄の効率も格段に上がる。品質も良くなる。さらに石炭を用いた火力発電所も稼働できる。小規模火力発電所の設備も用意し始めている。


石炭を用いた火力発電所となると環境負荷の大きさが問題になるだろうが、これも、現在の技術なら非常に高効率なシステムを構築できるから、規模さえ十分に小さければ焚火をしているよりも実は害がない。余熱で湯も沸かせるしな。


できれば天然ガスが出てくれるとありがたいものの、こちらは石炭よりも発見できる可能性は低いだろう。地形的な条件も関わってくるし。


実を言うと石炭の層はすでに見付かっている。この台地の果ての、高さ千メートル級の断崖絶壁には、石炭の層が露出してる部分があるんだ。しかしさすがにそれを掘り進むと、小規模なうちはまだ大丈夫としても、いずれは崩壊などの危険性も当然出てくるからな。だからできれば地表近くに露出してるものが望ましいと思う。


それを母艦ドローンや基幹ドローンが空からの映像分析で候補を絞り、そこにドーベルマンMPMを差し向けている。


が、ここまでのところ半径五百キロの範囲では見付かっていない。泥炭は見付かってるんだが、正直、泥炭だとエネルギー効率の問題がある。やはり石炭が欲しいところだ。


そんなこんなで、ドーベルマンMPMを派遣していたのに加えてホビットMk-Ⅱも派遣する。ドーベルマンMPM用のフライトユニットだったものにアタッチメントを追加。ホビットMk-Ⅱにも連結できるようにして送り出す。


ちなみに、この<フライトユニット>についても、これまでドーベルマンMPMベースだったものをホビットMk-Ⅱベースのものに切り替えていく予定だ。何しろ、少々過剰品質な面もあったしな。別にアルミ合金製のフレームでも、あかりがミレニアムファルコン号でやってるような無茶な機動をしなければ問題ないことも確認済みだ。ドーベルマンMPMやホビットMk-Ⅱでアクロバット飛行をする必要もない。


すると遂に、調査に赴いていたドーベルマンMPMの一機から、『石炭発見』の報せが届いた。


他の候補地に向かっていたホビットMk-Ⅱらに指令を与え、そちらに向かわせることにする。


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