シモーヌ編 複雑な気持ち

こうして五機のホビットMk-Ⅱは、要救助者を守るために囮として河に残って次々とクロコディアに襲われつつもしがみついて動きを封じ、さらに第三小隊の五機が第二小隊と同じくレインポンチョを簡易の浮き代わりに使って河に入り、流木に捉まった要救助者の救出に当たった。もちろんこちらもステータス画面は見る間に真っ赤になっていく。それでも決して躊躇わない。


そして要救助者を河岸にまで連れ戻し、無事に保護した。


今回は、実際にクロコディアに襲われる前に対応できたことで、ホビットMk-Ⅱでも何とかなったんだろう。


ただし、河に残った五機は機能を失い、簡易の浮きにしていたレインポンチョも破れてすべてが河底に沈んでいった。


要救助者を岸に引き上げた五機も、浸水により機能不全を起こし擱座かくざする。岸から小銃で援護していた五機に保護を引き継いで。


その五機は、小銃の弾倉を、ゴムスタン弾を装填したものに付け替えてクロコディアの追撃に備える。


擱座した五機のうち、まだかろうじて動けた二機も、岸に残していった小銃を装備して備える。


そこにクロコディアが上陸してきたのを狙い撃ち。


「ギャッ!!」


ゴムスタン弾とはいえ直撃すれば生身の地球人だと骨が折れることもある。頑丈な鱗で全身を覆われたクロコディアの場合はそこまでじゃないだろうが、かなりの衝撃と痛みはあるはずだ。実際、撃たれた者は怯んで河に戻っていく。それなのに中には撃たれても懲りずに再度近付こうとするのもいて、睨み合いに。


と、そこへ、


「ウォオオオーンン!」


独特の音を響かせて、空中に表れたモノ。


アリアンだ。要救助者が確認できたと同時に発進し、時速三百キロを超える全速力で向かってもらってたアリアンが到着したんだ。


巨大な<空飛ぶ怪物>が現れるとさすがにクロコディア達は慌てて水中に隠れ、姿が見えなくなる。


そしてアリアンは、外部スピーカーを使って、


「ご無事ですか!? シモーヌ!」


と声を掛けた。


そう。今回の経救助者も、<秋嶋あきしまシモーヌ>だったんだ。俺も画面を見ただけでもしかしたらと思ったが、元はコーネリアス号に配備されたメイトギア<アリアン2CVドゥセボー>だったアリアンには、完全に彼女が秋嶋シモーヌだというのが分かったんだな。


「可能性があるのは分かってたけど、こうして実際に起こると、複雑な気持ちにもなるってものね……」


いつの間にか俺の隣に来ていたシモーヌが、再び現れた<秋嶋シモーヌのコピー>を見て、そう呟いたのだった。


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