シモーヌ編 一緒に暮らしていくノウハウ
『主義主張を押し付けるな!!』
とか言う人間も地球人社会には多かったが、おいおい、待て待て、それを言うなら、他所様の家族の命の価値を自分の主観で勝手に決めるんじゃないよ。それが<主義主張の押し付け>でないなら何だと言うんだ?
『野生の動物は、生きていけない子供は見捨てる!』
って言うかもしれないが、野生を捨てた人間がそれを口にするのは筋違いだな。そもそも実際に生きていけないかどうかは、生まれてみないと分からない。
それにだいたい、知能だけで生きていけるかどうか決まるなら、地球人の幼児ほどの知能もないような生き物が生きていけてること自体、説明がつかないだろ?
だから俺は、そんなことで<命の価値>を図らないんだよ。生まれてきてくれるなら受け入れるし、受け入れた限りは見捨てない。自分が他者から受け入れてもらえてないからって妬むのはよせ。そんなことをしてるから余計に受け入れてもらえないんだってことに気付くべきだと思うぞ。
シモーヌの子は、俺が<親>だ。親の勝手でできるようなことをして、親の勝手で生まれてきてもらうんだ。その責任は俺が負うし、同時に利用できるものは何でも利用する。地球人社会でなら<制度>も含んでのことだな。利用できる制度があるなら利用するさ。誰にも文句は言わせない。
残念ながらここにはそういう<制度>はないが、代わりに文句をいう奴もいないし、その点ではむしろ気楽なもんだ。
知能の点で俺達に合わせることができないとしても、そんなことを言ったら
結局、<知能>だけで一緒にいられるかどうかは分からないってことだ。相手の能力に合わせた接し方ってものがある。
『愛さえあれば、真心さえあれば、相手も分かってくれる』
なんて寝言は言わないさ。と言うか、<愛>とか<真心>ってのは、要するにどれだけ手間を掛けるか、時間を掛けるか、いかに相手のことを理解しようと努力するか、っていう話だし。それを<愛>とか<真心>なんて曖昧な言葉で表そうとするから解釈違いが生じる。そんな解釈違いが生じるような状況を放っておくのは<愛>でも<真心>でもないな。
俺達にはすでに、
<俺達のルールを頭では理解できない者と一緒に暮らしていくノウハウ>
がある。それを思えば造作もないってことだ。
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