玲編 ロールアウト

新暦〇〇三六年二月二十八日




新しく作られた<工場>は、中で実際に作業を行ってる、


<ドーベルマンMPMの設計をベースにした据え付け型ロボット>


以外は、それこそ二十世紀終盤から二十一世紀初頭頃にかけての技術水準とほぼ変わらないものだった。しかし、ホビットMk-Ⅱを製造するにはそれで十分だった。その当時に作られていたロボットも、問題なのは制御系だけで、機体の構造の点ではそれなりのものができていたそうだ。その制御系を、コーネリアス号にストックされていた予備パーツを使うことで補っているわけだ。


もちろんその意味では、予備パーツが底をつけば再現できなくなる可能性は高いものの、そこについては、何とかなりそうな目途はすでについてる。サイズについては大きくなってしまうものの、惑星朋群ほうむで採掘できる素材だけで、ホビットMk-Ⅱくらいなら制御できるAIを作るのは、理論上は不可能じゃないことも分かってきたんだ。


ただし、その大きさはどんなに頑張って小さくしても本体だけでも机くらいになりそうだから、十全に機能させるための諸々の周辺機器も含めるとそれこそ小さな一軒家並みの大きさになりそうだから、ホビットMk-Ⅱそのものに搭載することはできないだろう。しかし、遠隔操作という形でなら何とかなるのも分かってるので、いずれはそっちに切り替えていくことになると思う。


例えば、集落で運用するだけなら、AIを収めておくための建物を用意すればいいわけだし。


各機体には簡易のAIを搭載しておけば十分な性能を発揮できる見通しも立った。


なんとか、


『新しいロボットを作る度に下位互換になっていく』


という流れは止められそうだ。


ちなみにホビットMk-Ⅰも、今もコーネリアス号で運用されて、データ収集と新造パーツの評価試験を担当してもらってる。これもロボットの立派な役目だ。


ホビットMk-ⅠがいるからこそホビットMk-Ⅱの完成度も上がっていくんだよ。


こうして新しく作られた工場での、ホビットMk-Ⅱの一号機がロールアウトした。コーネリアス号の工作室で作られたものと、設計そのものはもちろん同じなものの、工作精度がどの程度まで再現できているかは実際に動かしてみないと正確な部分までは分からない。


あと、一応、しゃべれるように、一部機能を追加してみた。新しいダミー集落を建設してるホビットMk-Ⅱにはない機能だ。と言っても、発声ユニットを後付けで追加しただけだから、簡単に同じにできるし、単に<仕様違い>というだけではある。


「どうだ? 調子は?」


タブレット越しに声を掛けると、


「ヴァッ!」


とだけ応えた。


……まだちゃんと連携ができてないみたいだな。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る