玲編 工場

新暦〇〇三六年二月二十日




れいあかりの出産も間近に控えた今日、遂に、ボーキサイト鉱床の脇に、アルミニウムを精製し、合金化し、さらにはホビットMk-Ⅱを製造するための<工場>が完成した。


これに向けて、コーネリアス号の工房で、アルミニウムを精製、合金化、ホビットMk-Ⅱを製造するロボットとその他諸々を急ピッチで製造してもらってたのが実を結んだわけだ。ドーベルマンMPMとアリス号機、ドライツェン号機の製造を後回しにしてな。


正直、ドーベルマンMPMもアリス号機もドライツェン号機も、今の時点では急いで用意する必要もなかったし。


まあ、<工場>と言っても、個人経営の町工場な雰囲気が目一杯匂ってくるそれだけどな。最新鋭のロボットを生産してる工場という印象はないと思う。


実際、作ってるロボットは、地球人社会では、


『子供の玩具おもちゃに実用性を与えた』


程度の代物だから、こんな感じでも対応できてしまうんだよ。ただし、AIの方はまだ当面、部品のこともあってコーネリアス号頼みではある。また、センサー類の一部や、AI以外の制御系の一部も、コーネリアス号のストックを利用してるから、その工場だけですべて作ってるわけでもないんだけどな。


ただ、コーネリアス号もそうなんだが、新しい工場も、まったく人間の姿がない、ひたすらロボットだけで稼働しているという光景は、ある種の異様さもあるだろうか。


地球人社会でも、人間の雇用を確保するのと、何もかもをロボット任せにしないという観点から、人間が一人もいない工場とかいうのはほとんど存在しないそうなんだ。あくまで人間の管理下に置くために。


だからそういう点でも、地球人社会でなら<違法操業>に当たる可能性もあるだろうな。ここがあくまで地球人社会の法が及ばない場所だからできてるだけで。


いずれ朋群ほうむ人が増えてくれば、就業してもらうさ。


ともあれ、人間がいれば式典の一つも行うところとはいえ、今はその必要もないから、用意ができたなら早速、ホビットMk-Ⅱの製造を開始する。が、それ自体、工場が完全に確実に稼働できるかどうか、要求された品質を確保できるかどうかを確かめながらのそれになるから、生産されるホビットMk-Ⅱも、いわゆる<初期不良>が発生する可能性も想定しての様子見だな。


その初期ロットについては、工場付近での雑務に当たってもらうことにしよう。


ホビットMk-Ⅱそのものの稼働試験も兼ねて。


なお、アリニドラニ村については、敢えてこのまま<職人の村>としてのシミュレーションを続けてもらうことにする。


鋼も、今のアリニドラニ村で生産される分で足りてるしな。


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